AIを入れたのに、1回きりで終わってしまう会社があります。AI顧問として現場に入っている私と、AiWiLL CTOの所が話して見えてきたのは、つまずき方に4つの型があることでした。今の業務をAIに置き換えて終わる。業界を知らないままAIをかける。仕事の話しかしない。1つ作って、次を探さない。
AiWiLL株式会社代表。AI顧問「WiLLAGENT」で、企業の仕事をAIと人が進められる形にする伴走支援を行っています。記事では、実務で使える手順と、人が確認すべき点を明らかにします。
この記事は、YouTube「AI顧問の現場録」の対談の記録です。これからAI顧問や外部の支援を頼む会社に向けて、どこを見ればいいかも整理しました。
この記事の結論
- AI顧問の価値は、AIを入れることそのものではなく、事業の成長につながるAI導入ができるかどうかです。
- 失敗パターンは4つ。①今の業務をAIに置き換えて終わる、②業界を知らないままAIをかける、③仕事の話しかしない、④1つ作って次を探さない。
- 裏返すと、①会社の目的と事業計画からAIの使い道を考える、②業界を一番知る社内の人と組む、③雑談から困りごとを引き出す、④1つできたら次の一手を一緒に探す、になります。
- 最初の一歩は、社内で一番、現場と業界を知っている人を1人決めて、その人と一緒にAIを触ることです。
動画で見たい方は、YouTube「AI顧問の現場録」の回をどうぞ:AIを入れただけで終わる会社とは。現役AI顧問2人が見た"4つの失敗パターン"(2026年7月の収録を、編集し直した版です)
AI顧問の価値は、事業の成長につながるか
顧問の一番の価値は、お客さんの課題ややりたいことに一番近くで寄り添って、そこに向かって一緒に走ることです。そこに、自分がどんな価値を出すのが一番強いかが掛け合わさります。
AI顧問なら、まずの名目は、その会社にとって適切にAIを導入することです。ただ、そもそもそれは事業を成長させるためにやること。だから、事業の成長につながるAI導入ができるかどうかが、AI顧問の価値になります。
図解
一番近くで寄り添い、一緒に走る
顧問としての価値
AIを適切に導入する
まずの名目
事業の成長につながる導入をする
AI顧問の価値
失敗① 今の業務を、AIに置き換えて終わる
所の問題意識はここでした。AI顧問を名乗る人は増えているけれど、「今やっている業務をAI化しましょう」と言うだけで、それが本当に会社のためになっているかまで見ていない人が多い。私は「それは説明員くらいかもしれない」と返しました。
たとえば、手書きでやっている記録を全部スプレッドシートにして、AIに読み込ませて、新しい事業に使えるようにしましょう、という提案。確かにできます。お客さんが今困っていることを聞いてAI化すれば、その分の費用対効果は数字として出ます。でも、効くのはその業務だけです。
所の言葉を借りれば、困りごとのAI化は枝葉です。会社のミッションや事業計画という幹に対して、AIをどう使うかを考えないと、会社のためにはなりません。
失敗② 業界を知らないまま、AIをかける
AIはほぼ何にでも使えます。でも、自分が知らない領域では、価値を出すのはなかなか難しい。AIは掛け算の道具だからです。業務の知識が10でAIが100なら、1000の価値が出せます(数字はたとえです)。コンサルも顧問も研修講師も、その人の業界の知識やビジネスの力が、そのまま提供する価値になります。
だから、特化型の顧問は強いと思っています。ずっとSNSをやってきて、Xを伸ばすのが大好き、試すのが大好き、という突き抜けた人がX×AIの顧問をしていたら、それはとてもいい。不動産業界に30年いて、自分が日々やってきた業務をAI化してきた人がAI顧問をやれば、不動産の人には刺さります。所が言ったとおり、元がゼロなら、掛けてもゼロです。
では、知らない業界の会社ではどうするか。会社ごとのコンテキスト(AIに渡しておく前提の情報)を、知らない業界で外の人が作るのは難しい。だから、入り方を変えます。
図解
業務を理解している社内の人と組む
その業界・その仕事を一番知っている人
一緒にAIを触る
その人がAIを使える状態になる
その人が自分でコンテキストを作る
業務の知識を、AIが使える形にする
全業種で力を発揮できる
顧問は、AIの使い方の側を支える
所によると、最近は日本でもFDE(Forward Deployed Engineer)という言葉が広がり始めています。顧客の現場に入り込み、製品の導入から定着までを支えるエンジニアのことです。現場に入り込んで一緒にやるという点で、AI顧問と近い考え方です。
失敗③ 仕事の話しかしない
所は、お客さんと仕事に関係ない話をしたことが、1割くらいしかないと言っていました。そこが、コンサルとしてやれるかどうかの溝ではないか、と。
私の場合、仕事はほとんど紹介から来ます。たとえば、知り合いの旅館が代替わりして、これから全部をリニューアルして、打てる手は全部打ちたい、という相談がありました。全部をコンサルや外注に頼むと、大変なことになる。AIを使いこなせるようになれば、自分たちでできるのではないか。「できるんじゃない?」と答えたのが始まりです。つながりの中で困っている人がいるから、相談をもらえて、提案ができた。それは、どれだけ仲良くなれるかにかかっていると思います。
AIは仕事以外にも使えます。「来週、お祭りですよね」という話になれば、地域のお祭りは意外と根回しが大変だという話になり、じゃあ準備のタスク出しをAIでちょっとやってみましょう、となる。その人の困りごとに、何でも試してみる。そうしているうちに、その人の人となりが見えてきて、会話が増え、仲良くなっていきます。
図解
いろいろな話をする
仕事の外まで
その人のやりたいことが分かる
この人はこうしたいんだな
「これを教えたらいい」が出てくる
日常生活の中で思いつく
提供できる価値が増えていく
担当者が楽しくなると、AIの使い方は仕事に戻ってきます。会社の目標と、担当者個人のやりたいことは、違うことが多いものです。会社は売上を上げたい。担当者は、そのために振られたマーケティングを頑張っている。でもその人は、プライベートではバンドをやっているかもしれない。顧問が「バンドでもAIはこう使える」という小話をすれば、その人は家で自分の音楽にAIを使い始め、そこで得た使い方が、マーケティングの仕事にも戻ってくる。「これ、仕事でも使えるじゃん」と、本人が気づくんです。
仲良くなるには、自分の話のネタをたくさん持っておくと楽です。私は、熱海に住んでいることを必ず話します。熱海の人に話しても、東京で話しても、そこから会話が広がるからです。
所のネタは、タロット占いでした。名刺交換をすると必ず突っ込まれるそうです。実際に過去に10回ほど、社長さん向けにタロット占いをして、そこからAI導入の話に入っていったそうです。占いの中で、社長の悩みは必ず出てきます。提案ができるのは当然です。
失敗④ 1つ作って、次を探さない
進まなかった案件を振り返ると、まず、話が弾まず相手のニーズを引き出せなかった案件は、たいていクローズになります。次の提案もできないし、会社の価値も上げられないからです。
そして多いのが、「AIを導入して、マーケティングの業務を効率化したい」という依頼に対して、効率化できました、で終わるパターンです。所も、作りたいと言われたものを作って終わる案件は多いと言います。今は1から3の機能しか使っていないけれど、他に4、5、6の機能もある。どうしますか、という提案は、知っていればできることが多いはずだ、と。
私は、1つ終わったら「一回、模索のミーティングをしましょう」と言います。AIはこれだけじゃない、こういうことも、こういうこともできる。御社にとって次のブレイクスルーになるAI導入ができるかもしれないから、一回、壁打ちをしませんか、と。熱海だと、壁打ちの飲み会になることもあります。
図解
1つ作る
たとえば、マーケティングの業務を効率化できた
模索の壁打ちをする
AIはこれだけじゃない
次の一手を見つける
次のブレイクスルーになるかもしれない
持ち帰り:4つを裏返して、支援を頼む前に確かめる
| 失敗パターン | 裏返した進め方 | 支援を頼む前に確かめること |
|---|---|---|
| 今の業務をAIに置き換えて終わる | 会社の目的と事業計画から、AIの使い道を決める | 「それは、うちの事業のどこに効くのか」に答えてくれるか |
| 業界を知らないままAIをかける | 社内で一番、業界と現場を知っている人と組む | 社内の誰と一緒にAIを触る想定か |
| 仕事の話しかしない | 雑談から、困りごとややりたいことを引き出す | 最初の打ち合わせで、こちらの話をどれだけ聞こうとするか |
| 1つ作って、次を探さない | 1つできたら、次の一手を一緒に探す | 最初の仕事が終わったあとに、何をする想定か |
AI顧問・研修・コンサルの違いと選び方はAI顧問・研修・コンサルの選び方、導入する側で止まった会社に多いパターンはAI導入の失敗パターン7つとAIが社内で止まる会社の2つの共通点にまとめています。
まとめ
AIを入れただけで終わる会社には、今の業務を置き換えて終わる、業界を知らないままAIをかける、仕事の話しかしない、1つ作って次を探さない、の4つのつまずきがありました。どれも、事業の成長と、現場の人との距離の問題です。現場の中に入って、お客さんとどれだけ話せるか。そこが、今いちばん楽しいところです。
最初の一歩として、社内で一番、現場と業界を知っている人を1人決めて、その人と一緒にAIを触ってみてください。

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