会社にAIを入れたら、社員は減らせるのか。私の答えは、直近の数年でそれはまず起きない、です。生産性の低い仕事はAIに移りますが、人の仕事はなくならず、負荷が高く生産性も高い仕事へ1段上がります。社長が考えるべきなのは、何人減らせるかより、AIで空いた時間をどこへ回すかです。
AiWiLL株式会社代表。AI顧問「WiLLAGENT」で、企業の仕事をAIと人が進められる形にする伴走支援を行っています。記事では、実務で使える手順と、人が確認すべき点を明らかにします。
この記事は、YouTube「AI顧問の現場録」で、湯河原の川沿いを歩きながら、聞き手の高橋の質問にAI顧問の私が答えた回の記録です。
この記事の結論
- 3つのAIに同じ質問をすると、答えは「減らせる」(ChatGPT)、「減らさずに生産性を上げる」(Gemini)、「減らすべきではない」(Claude)に割れました。私の考えは、GeminiとClaudeに近いです。
- 直近の数年で、AIで人がいらなくなることはまず起きないと見ています。インターネットやロボットのときと同じで、1人あたりの生産性が上がり、人はより負荷の高い仕事を並行して抱えるようになります。
- 仕事のレイヤーが1つ上がります。スタッフはAIに指示するマネージャーに、マネージャーはそのスタッフを導くリーダーに、経営者は事業から市場と時代を考える立場へ。
- 社員は「どうすれば自分が楽できるか」を考えればいい。サボり上手は、AIの使い上手です。
- 落とし穴は、AIで空いた時間をただ仕事で埋めることです。評価は上がらずに負荷だけが上がり、AIを使う気が落ちます。空いた時間の使い道は、マネージャーと経営者が一緒に決めます。
- 削減には限界があり、売上には上限がありません。削れるところは削り、空いた人と時間は新しい売上づくりへ回します。
- 最初の一歩は、社員に「本当はやりたいのに、手が回っていない仕事」を3つずつ書いてもらうことです。
動画で見たい方は、YouTube「AI顧問の現場録」の回をどうぞ:AIを入れたら社員は減らせる?ChatGPT・Gemini・Claudeの答えと、現場の結論(2026年10月8日の収録)
3つのAIに聞いたら、答えが割れた
聞き手の高橋が、「会社にAIを導入すると、社員は減らせるのか」という、少し怖い質問をChatGPT・Gemini・Claudeの3つに投げてみました。
図解
ChatGPT
減らせる
定型の問い合わせ対応をAIに任せ、退職者の補充を減らす。人の確認を含めて仕事が回るか、実績を見てから減らせる人数を決める
Gemini
減らせないが、生産性が上がる
月50時間のデータ入力をAIで5時間に。空いた45時間で営業を支えれば、売上の増加が見込める
Claude
減らすべきではない
AIは人の代わりではなく、仕事を軽くする道具。見積書や日報づくりを半分にして、訪問を増やす。減らすより稼ぐ方が得
聞き手の見立てでは、GeminiとClaudeは似た考えです。私の考えも、この2つに近いです。
直近の数年で、人がいらなくなることはまず起きない
この質問は、正直よく言われます。顧問先でAIにできる業務を一緒に見ていくと、「これはもうスタッフがいらなくなりますね」と言われることがあります。「AIがどんどん人間を代替していくなら、僕らはどうしたらいいんですか」と聞かれることもあります。
結論から言うと、かなり遠い先ならそうなるかもしれません。でも、直近の数年、しばらくの間は、まずそんなことは起こらないと思っています。
大手の企業がAIによる代替で人員を減らす、という話は実際にあります。ただ、そこで起きているのは、他の部署への異動だったりします。人のやる仕事の量は、AIを使うことで、むしろ増えていきます。
数字で見ても、AIで人を減らす方向を一番に見込んでいる会社は少数です。東京商工リサーチの調査では、生成AIの活用を推進している企業2,088社に、今後5年の人員構成への影響として最も可能性が高いものを聞くと、「人員構成への影響はない」が46.5%、「既存業務の効率化で、総従業員数を抑制する可能性がある」が16.1%でした。
| 今後5年の人員構成への影響(最も可能性が高いもの) | 割合 |
|---|---|
| 人員構成への影響はない | 46.5% |
| 既存業務の効率化で、総従業員数を抑制する可能性がある | 16.1% |
出典:東京商工リサーチ「『生成AI』に関するアンケート調査」(2026年3月31日〜4月7日調査・有効回答6,327社・2026年4月27日発表)。母数は、生成AIの活用を「会社として推進」または「部門によっては推進」と答えた企業2,088社(大企業246社を含む)。発表ページ
これは、インターネットのときにも起きたことです。DXで人がいらなくなる、さらに昔なら、ロボットを入れたら作業員がいなくなる、と言われました。確かに、一部の仕事はなくなりました。でも結局どうなったかというと、1人あたりの生産性が上がり、もっと生産性の高い仕事が増えて、それをこなす人は忙しくなっていきました。
AIもまったく同じです。
図解
生産性の低い仕事
人がやらなくていい仕事は、AIが代わりにやる
人の仕事
生産性が高く、負荷も高い仕事を、たくさん並行して進める
結果
仕事はなくならない。より高負荷で、生産性の高い仕事を大量にする
昔から、楽になって人はどんどん悠々自適になる、と言われてきました。でも結果として起きているのは、人がどんどん高負荷な仕事をやるようになっている、ということです。聞き手の「ヤバいですね」に、私も「ヤバいですよ」と返しました。
仕事のレイヤーが、1つ上がる
AIを入れて仕事をこなしていくと、人の働き方はどう変わるのか。簡単に言うと、レイヤーが1個上がります。
図解
スタッフ → マネージャー
自分がやっていた作業を、AIに指示してやらせる
マネージャー → リーダー
AIを使って働くスタッフを、どうまとめ、どう導くか
経営者 → さらに上流へ
事業だけでなく、市場や時代をどうしていくかを考える
作業をしていたスタッフは、自分の作業をAIに指示するので、マネージャーになります。指示をしていた人は、AIを使って仕事をするスタッフをまとめ、導いていくリーダーシップが必要になります。それを束ねていた経営陣は、その人たちを使ってビジネスをどう成功させるか、さらに上流を考えることになる。経営者は、これまで事業のことを考えていたはずですが、これからは市場や時代をどうしていくかというレイヤーまで考える必要が出てきます。
聞き手は「部下をどんどんAIで作って、自分はどんどん難しいことを担当していく」とまとめました。それが求められますし、それができれば、AI時代でも代替される人材ではなく、ちゃんと価値を生み出せる人でいられます。生産性が上がるぶん、スキルも上がっていきます。
社員は、楽をすることだけ考えればいい
聞き手からは「社長にはうれしい話で、社員には身が引き締まる話ですね」と言われました。でも、社員の方は、別にそれを意識しなくていいと思っています。
考えるのは、自分の仕事をいかに楽にするか。自分の仕事をどれだけAIに投げられるか、どうすれば自分が楽できるかに集中すればいい。サボり上手が、AIの使い上手です。
残業になっていた仕事をAIに全部任せて、定時に上がって、おいしくビールを飲む。聞き手が言うとおり、そういう前向きな面も大いにあります。
落とし穴は、空いた7時間をただ埋めること
1日8時間かけていた仕事が、AIを使うと1時間で終わる。これは結構あるあるです。すると、空いた7時間で何をするか、という話になります。
ここは、会社とちゃんと折り合いをつけて考えたほうがいいところです。楽になったからといって、空いた時間を、ただ8時間まで仕事で埋めていく。そうすると、本人の評価はそんなに上がらないまま、仕事の負荷だけが上がって、しんどいだけになります。
図解
ただ仕事で埋める
評価は上がらず、高負荷でしんどいだけ。AIを使う気が下がる
使い道を決める
マネージャー・経営者が、空いた時間の行き先を一緒に考える。会社が成長できる
「AIを使うほうが、仕事がつらくなるじゃん」となれば、AIを使うモチベーションが下がっていきます。そういう組織は、成長できない会社になってしまいます。
だから、AIで時間を減らして楽になった人をどうしていくかは、マネージャーや経営者、リーダーがしっかり考えてあげないといけません。浮いた時間をどう使うかは、しっかり考えてあげたほうがいいです。時間の削減だけで効果を測ることの落とし穴は、生成AIの費用対効果の測り方にも書いています。
削減には限界があり、売上には上限がない
最後に聞き手から「3つの答えのうち、強いて言えば誰派?」と聞かれました。私はClaude派です。
業務を効率化して経費を減らすアプローチと、人とAIを使って売上を上げていくアプローチ。削減には、いつか限界が来ます。でも、売上を上げるほうには上限がありません。
だから、削減できるところまではパッとやってしまう。そして、その空いた人やリソースを、売上を上げるために使っていく。それが一番正しいと思っています。人は減らすべきではなく、業務で浮いた分は、新しい売上をつくるために使う。これが私の考えです。
この結論が当てはまらない場合
「直近の数年はまず起きない」は、私が顧問先で見てきた範囲での見立てです。どの会社でも人が減らないという保証ではありません。
たとえば、仕事のほとんどが定型の問い合わせ対応やデータ入力で、空いた時間を回せる仕事をすぐには用意できない会社もあります。その場合は、ChatGPTの答えのように「定型の仕事をAIに任せて、退職者の補充を減らす」という選択が現実的になることもあります。そのときも、実績を見てから人数を決めること、残る人の負荷が上がりすぎていないかを見ることは同じです。
持ち帰り:空いた時間の行き先を、先に決める
最初の一歩は、社員に「本当はやりたいのに、手が回っていない仕事」を3つずつ書いてもらうことです。そこが、AIで空いた時間の行き先になります。
書いてもらったら、次の3つを確かめてください。
- 空いた時間の行き先を、マネージャーや経営者が本人と一緒に決めているか。
- AIで浮いた時間を、ただ今の仕事で埋めていないか。
- 削減だけでなく、新しい売上をつくる使い道が入っているか。
まとめ
AIを入れても、直近の数年で人がいらなくなることはまず起きません。生産性の低い仕事はAIに移り、人の仕事は1段上がって、より負荷の高い、生産性の高い仕事になります。社員は楽をすることを考えればよく、経営者とマネージャーは、空いた時間の行き先を考える。削減には限界があり、売上には上限がないので、空いた人と時間は新しい売上へ回します。
最初の一歩として、社員に「本当はやりたいのに、手が回っていない仕事」を3つずつ書いてもらってください。

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