点検写真からAIに文章を作らせるときは、「異常を診断して」ではなく、「見える事実と現場の記録を、報告書の項目へ整理して」と依頼します。写真だけでは寸法、測定値、原因、基準への適合を確定できない場合があるためです。下書きと専門担当者の判断を分ける入力表を用意します。

赤堀亘
執筆・監修 AiWiLL株式会社 代表取締役 赤堀亘

AiWiLL株式会社代表。AI顧問「WiLLAGENT」で、企業の仕事をAIと人が進められる形にする伴走支援を行っています。記事では、実務で使える手順と、人が確認すべき点を明らかにします。

写真を送る前に、対応表を作る

画像だけを複数枚渡すと、場所や撮影順の対応を取り違える可能性があります。写真番号を付け、どの設備・場所の、何を記録したものかを現場メモと結び付けます。以下は架空の記入例です。安全性や不具合の診断例ではありません。

写真番号 場所 現場で記録した事実 未確認
P01 入口側の設備A 外観を撮影。ラベルの全体は写っていない 型式、製造年
P02 同設備の側面 現場メモに「表面の変色」と記録 原因、内部状態
P03 別の設備B 周辺の設置状況を撮影 測定値、基準への適合

AIが読み取った内容と、担当者が現場で確認した内容を同じ欄へ混ぜないでください。特に型式や数値は、一文字の読み違いでも別の意味になります。ラベルが切れている写真から型式を推測させず、追加撮影や原資料で確認します。

そのまま調整して使える依頼文

添付写真と対応表から、点検報告書の下書きを作ってください。
出力は写真番号ごとに、次の順にします。
1. 対応表に記録された場所・対象
2. 写真から確認できる外観上の事実
3. 現場メモに書かれた事実
4. 写真とメモの食い違い
5. 担当者が追加確認すべき項目

原因、故障、安全性、法令・基準への適合を推測で断定しないでください。
数値と型式は不鮮明なら「判読できない」としてください。
資料にない測定値や実施していない作業を補わないでください。
提出用の結論欄は、専門担当者の確認待ちにしてください。

下書きで見る三つの間違い

一つ目は写真の取り違えです。P01の記述がP03へ付いていないか、番号と画像を並べて見ます。二つ目は言い換えによる断定です。「変色して見える」が「劣化している」へ変わると、観察から判断へ踏み込んでいます。三つ目は未実施作業の混入です。清掃や測定をしたと書かれていないか、元メモと照合します。

AIの文章が自然でも、この三つが正しいとは限りません。担当者の確認欄を空欄のまま残せる様式にして、下書きの完成と点検の完了を区別します。修正した理由は、次回の指示文へ反映する材料にもなります。

提出前に写真と文章を一枚ずつ照合する

  1. 場所、設備名、撮影日が原記録と一致しているか。
  2. 各写真が正しい記述の隣に置かれているか。
  3. 写っていない数値や内部状態を補っていないか。
  4. 専門担当者が結論と必要な対応を確認したか。
  5. 提出先に応じた様式、ページ順、写真の解像度になっているか。

個人の顔や車両番号などが写る場合は、提出やAI入力が許可される範囲を確認します。写真の加工が必要なら、会社の記録管理ルールに従って原本を残し、提出用と区別します。本文生成のために、関係のない写真までまとめて渡す必要はありません。

現場メモから報告書へ移す全体工程は点検報告書の記事で説明しています。自社の様式に合わせたい場合は、報告書の下書きと確認手順の設計をご相談ください。

確認に使った資料

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