先週変えたはずのルールなのに、AIが前のルールで返事をしてくる。これに気づくのは、たいてい出来上がった資料を見たときではありません。AIの返事そのものを読んでいて、「あれ、それはもう変えたはずだ」と思う瞬間です。

赤堀亘
執筆・監修 AiWiLL株式会社 代表取締役 赤堀亘

AiWiLL株式会社代表。AI顧問「WiLLAGENT」で、企業の仕事をAIと人が進められる形にする伴走支援を行っています。記事では、実務で使える手順と、人が確認すべき点を明らかにします。

原因は、ルールの管理が足りないことではありません。ほとんどの場合、AIが読んでいるのが正しい原本ではなく、その写しだからです。写しは、自分が古くなったことを言いません。

気づいたのは、出力ではなく返事の方でした

私の場合は、価格とサービスの説明を変えたあとでした。変更は済ませていたのに、AIが古い情報のまま資料を作ってきた。

出てきた資料のレイアウトも文章も、問題ありませんでした。エラーも出ていません。ただ、載っている条件が前のものだった。

顧客に出る前に気づけたのは、私が読んだからです。もし枚数が多くて全部は読まずに送っていたら、変更前の価格が相手の手元に届いていたことになります。

原因は、AIが原本ではなく写しを読んでいたこと

自社では以前、AIへの指示書を2系統持っていました。Claude Code用のものと、Codex用のものです。Codex側は、Claude Code側の内容を写したものでした。

写したものは、元を直しても自動では追随しません。

2026年8月17日に、それが実際に起きていたことが分かりました。スライドのデザインガイドを改訂したのに、Codex側の指示書は2世代前のフォルダを指したまま残っていました。参照先のパスにはもう何も無く、ガイドも素材も1枚も読めない状態です。その状態でCodexに制作を任せると、当然、改訂前の見た目で出てきます。

そのとき、どこにもエラーは出ていません。「参照先が見つかりません」とも言われない。ただ、古い方の答えが返ってくるだけです。

管理表を増やしても直らない理由

この問題に対して、「最新版の一覧表を作って参照させる」という解き方がよく紹介されます。私も考えました。

ただ、その一覧表も写しです。原本が変わったときに一覧表を直し忘れたら、今度は一覧表が古い答えを配ります。 管理する対象が一つ増えただけで、構造は同じままです。

写しが2枚になると、確認する場所も2か所になります。増えるほど、どれが本物か分からなくなる。

やったのは、正系をNotionへ集約することでした

いま自社では、正しい原本はNotionだけに置くことにしています。価格、サービスの説明、商品の定義。同じ文書をローカルに二重で持ちません。

AIが参照するときも、その1か所を見ます。写しが無ければ、古い答えが出てくる経路そのものがありません。

どうしても写しが必要なもの(AIの実行ルールやコードのように、ローカルに置かないと動かないもの)は、写しだと分かる形で扱っています。そして元を変えたときは、旧い名前と旧いパスを全文検索して、同時に直す。これは変更のたびに必ずやる手順にしました。8月17日の一件は、この手順が無かったから起きています。

解き方何が起きるか
最新版の管理表を作る管理表自体が古くなる。確認する場所が増える
写しを置いて、気づいたら直す気づく方法が無い。エラーにならないため
原本を1か所に集約する古い答えを返す経路が無くなる
写しが必要なときは、変更時に旧語を全文検索する直し忘れが残らない

それでも、最後は人が読みます

今回、変更前の価格が顧客に届かなかったのは、私が資料を読んだからです。集約したあとも、この一段は外していません。

AIが古い情報で答えるとき、機械のチェックには何も引っかかりません。処理は成功し、書式も整い、締切にも間に合う。中身だけが古い。 これは人が読んで初めて分かる種類の欠陥です。

同じ「エラーにならない失敗」を別の角度から書いたものとして、直した1回をどこに置くかと、別のAIにレビューさせる運用があります。参照先そのものの作り方はコンテキストを社内で共有する方法に書きました。

この記事の範囲

2026年9月9日の赤堀亘への取材と、自社の作業記録(2026年8月17日)をもとに構成しています。自社での運用であり、すべての会社に同じ形が当てはまるとは限りません。とくに、業務システムの都合で原本を1か所にまとめられない場合は、写しの側に「これは写しである」ことと、元がどこかを書いておく方が現実的です。

古い情報がどれくらいの頻度で混ざっていたかは、件数として計測していません。ここに書いたのは、気づいた事象と、それに対して実際に変えたことまでです。

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