「AIが動きません」だけでは、次の担当者は最初から聞き直すことになります。一方で、画面やログを丸ごと送ると、APIキーや顧客情報まで含めてしまうことがあります。必要なのは、大量のログではなく、同じ条件で問題を確かめられる記録です。

赤堀亘
執筆・監修 AiWiLL株式会社 代表取締役 赤堀亘

AiWiLL株式会社代表。AI顧問「WiLLAGENT」で、企業の仕事をAIと人が進められる形にする伴走支援を行っています。記事では、実務で使える手順と、人が確認すべき点を明らかにします。

ここではAiWiLLの記事制作・運用で重視している「入力・出力・確認する人を分ける」考え方を、障害の引き継ぎへ当てはめた記入例を示します。実在の顧客の障害や、実測した復旧時間を紹介するものではありません。

最初の連絡でそろえる六つの項目

  1. 何の業務が止まっているか。納期や影響する範囲も記載します。
  2. いつ、どこから実行したか。日時にはタイムゾーンを付けます。
  3. 本来何が出るはずだったか。期待結果を一文で書きます。
  4. 実際にはどうなったか。エラー番号と伏せ字にしたメッセージを残します。
  5. 最後に成功してから変えたものは何か。不明なら不明と記載します。
  6. 同じ入力で再現するか。未確認なら推測で埋めません。

そのまま使える障害メモ

【業務】
対象の処理:
影響範囲/期限:
一時的な代替手段:

【観測した事実】
発生日時とタイムゾーン:
実行場所(PC・エディター・定時処理など):
ツール/バージョン/モデル:
期待した結果:
実際の結果:
エラー番号と共有用メッセージ:
最後に成功した日時:

【再現】
入力データの説明(秘密情報は含めない):
操作1:
操作2:
再現した回数/試した回数:
最小サンプルでも再現するか:

【変更と判断】
直前の変更:
試した対処とその結果:
原因の仮説(事実と分ける):
まだ試していないこと:
次の確認担当と期限:

「観測」と「原因の仮説」を混ぜない

たとえば、説明用の架空ケースとして「9月5日9時10分JST、Windowsの定時処理で報告書が生成されなかった。手動実行では生成された」と記録します。ここまでは観測です。「定時処理の認証が切れたのだろう」は仮説で、別欄へ書きます。

手動実行と定時処理で違うのは、アカウントだけとは限りません。作業フォルダー、環境変数、入力ファイルの状態も候補です。一つの仮説を確定したように書くと、次の担当者が他の可能性を見落とします。「認証は未確認」と書ける記録のほうが、調査を続けやすくなります。

ログを共有する前の伏せ方

エラー文に含まれるキー、トークン、メールアドレス、顧客名、ファイルの内容を確認します。認証ヘッダーは値を切り詰めるだけでなく、共有用コピーから値全体を外します。原本が調査に必要な場合は、アクセス範囲を管理できる保管先へ置き、一般のチャットに貼りません。

情報 共有メモでの扱い
HTTP 401、処理名、発生時刻 調査に必要な事実として記載
顧客の報告書本文 内容を再現できる架空サンプルに置き換える
認証情報を含むURL クエリや署名を外し、必要なパスだけ示す
APIのリクエストID 共有先のサポート方針に従い限定して渡す

復旧したら、何をもって完了とするか

エラーが消えただけでは、業務に必要な出力が戻ったとは限りません。生成物を開けるか、件数が合うか、担当者が内容を確認できるかまで確かめます。定時処理の問題なら、通常の実行経路で再確認してください。

完了欄には「変更した設定」「確認した入力」「確認結果」「残る制約」を追記します。その後、同じ問題で最初に見る手順だけを運用マニュアルへ反映します。個別障害の長い会話をすべてマニュアルへ移す必要はありません。

AIに同じ指摘を繰り返す問題も、観測と指示を記録に残すことから整理できます。業務ごとの復旧担当や確認基準を決めたい場合は、AIの運用体制についてご相談ください。

参照した資料

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