社員がこっそりAIを使って、会社の情報を入れていた。そう分かったら、会社はどうすればいいのか。私の答えは、判明した時点で、優先度をかなり高くして、会社のAIのルールと環境を整える、です。これは守りの話で終わりません。最新のAIを会社のバックアップのもとで使える環境は、採用でも事業でも競争優位になります。そして、こっそり使っていた人は、伸ばせば会社を引き上げてくれる人材です。

赤堀亘
執筆・監修 AiWiLL株式会社 代表取締役 赤堀亘

AiWiLL株式会社代表。AI顧問「WiLLAGENT」で、企業の仕事をAIと人が進められる形にする伴走支援を行っています。記事では、実務で使える手順と、人が確認すべき点を明らかにします。

この記事は、YouTube「AI顧問の現場録」で、顧問先を訪ねた日に、秋の公園で聞き手の高橋の質問にAI顧問の私が答えた回の記録です。

この記事の結論

  • 社員が会社に相談なく、会社の情報を個人のAIに入れているのは、非常に良くない状態です。
  • AIには個人向けのプランと、会社向けのチームプランがあります。個人向けは、入れた情報が学習に使われることがあります。会社で使うなら、会社が契約したプランで、社員にアカウントを渡すのが前提です。
  • 会社が決めたツールや規定の外で、社員がこっそりAIを使うことを「シャドーAI」と呼びます。会社が意図しないツールで、顧客情報や自社の情報が扱われているかもしれない、深刻なリスクです。
  • 判明した時点で、すぐにルールと環境を整えます。優先度はかなり高いです。
  • これは守りだけの話ではありません。AIを使える環境は、採用と事業の競争優位になります。
  • こっそり使っていた人は、好奇心とポテンシャルのある人です。ルールさえ作れば、伸び伸び育ちます。
  • 最初の一歩は、「AIに入れないもの」を4つ決めて全員に送り、会社向けのプランに切り替えることです。

動画で見たい方は、YouTube「AI顧問の現場録」の回をどうぞ:社員がこっそりAIを使っていた。禁止より先に、会社がやること(2026年10月8日の収録)

社長から、最近よく受ける相談

聞き手の高橋が持ってきたのは、最近よく社長さんからいただく相談でした。

再現イメージ

聞き手

社員の人が、結構こっそりAIを使っていて、相談なく会社の情報を入れちゃったりしているそうで。どうしようかなと。

赤堀

非常に良くないですね。

非常に良くないですね。

収録のやり取り(言いよどみだけ整えています)

2回言いました。それくらい、良くない状態です。

前提:個人のプランと、会社のプランは違う

そもそもの前提として、AIには、個人向けのプランと、会社向けのチームプランがあります。個人向けのプランでは、顧客情報などを入れると、それが学習に使われることが十分にあります。既定で使われるもの、設定で止められるもの、本人の許可で使われるものと、扱いはサービスによって違います。

図解

個人プラン

入れた情報が、学習に使われることがある

チームプラン(会社向け)

会社が契約して、社員にアカウントを渡す

AIのプランは、2種類

会社で使うなら、まずチームプランです。会社が契約したプランの中で、社員にアカウントを付与した状態で使う。その上で、社内でAIを使うルールを決める。これがとても大事です。

ところが、ルールを持っている会社はまだ少数です。東京商工会議所の調査では、生成AI活用の指針・ガイドラインを「策定している」と答えた会社は7.7%でした。

出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2026年3月25日〜4月15日調査・主に東京23区の中小企業・回答1,272社・2026年6月17日公表)。7.7%の母数は、デジタル化の段階がもっとも低い企業を除く960社(生成AIを使っていない会社も含む)。発表ページ

社長が聞きに来る時点で、もう良くない

ルールがあるかないかでも話は変わります。ただ、社長や上司が疑問を抱いて聞きに来る時点で、すでに良くない状態です。これを「シャドーAI」と言います。

図解

シャドーAI

会社が決めたツールや規定の外で、社員がこっそりAIを使うこと

用語

たとえば、会社としてGoogle Workspaceを入れていて、GoogleのAIを試験的に使える状態にしている。それでも社員が「俺はGensparkがいいんだ」「Claudeがいいんだ」と言って、会社の規定の外で、こっそり別のAIを使う。これがシャドーAIです。

ルールが追いついていない、という事情もあるかもしれません。でも会社から見れば、意図しないツールで、社員が顧客情報や自社の情報を扱っているかもしれない。結構なリスクです。深刻は深刻です。

使っているAIを会社にすべて伝えている人は、多くありません。サイバーセキュリティクラウドの調査では、業務で生成AIを使う会社員360名のうち、使っている生成AIを「すべて申請・共有している」と答えたのは18.9%でした。

出典:サイバーセキュリティクラウド「生成AI利用実態調査2026」(2026年6月2日〜4日調査・業務で生成AIを利用する会社員360名への個人調査・2026年6月23日発表)。発表ページ

判明した時点で、すぐルールと環境を整える

だから、その質問が出た時点で、速攻でAIのルールを整え、環境を整えましょう。判明した時点で、すぐ取り組んだほうがいいです。優先度は、かなり高いです。

図解

  1. ルール

    AIをどう使うか、何を入れてはいけないかを決める

  2. 環境

    会社でAIを契約して、社員にアカウントを渡す

判明したら、すぐやること

社内ルールのひな形は、生成AIの社内ルールの作り方で全文を公開しています。どの情報をどこまでAIに渡してよいかの考え方は、AI導入のセキュリティと情報入力の考え方にまとめています。

守りだけじゃない。AIを使える環境は、採用の武器になる

これは、社内の環境を整えましょう、リスクを減らしましょう、という話だけではありません。もっとプラスにも働きます。

この会社なら最新のAIが使える。AIを使って業務をこなせる環境で、それを会社がちゃんとバックアップしてくれる。そういう状況を作れると、今は採用でも事業でも、競争優位になります。

会社のルールが古くて、いまだに紙で申請しないといけない。決められた古いシステムで仕事をしている。そういう会社には、優秀な人ほど嫌気がさしてきます。そして会社を辞めて、最新のチャレンジができるスタートアップに飛び込んだり、起業したりする。

逆に言えば、そういう人を獲得するチャンスにもなります。最新のAIを、チームで、組織で使う経験は、個人や小さな会社ではなかなか得られません。ルールがしっかり決まっていて、AIを使える環境で、自分のスキルを上げられる。そんな環境で働けることは、採用にとってプラスです。

図解

守り

意図しないツールで、顧客情報や自社の情報を扱うリスクを抑える

攻め

最新のAIを、組織で使える。採用と事業の競争優位になる

ルールと環境を整えると

こっそり使っていた人は、伸びる人材

聞き手は、こう話していました。先走って勝手にAIを使う人は、自分の業務を早く終わらせたい気持ちもあるけれど、好奇心が旺盛で、新しく面白い道具を使ってみたい人でもある。会社がまだ古くて、その頭がないから、自分から使ってしまった。セキュリティのことまで考えていなかっただけで、人材として悪い人ではない、と。

私も同じ考えです。そういう人は、新しい技術をどんどん取り込んで、仕事をうまく進めたり、質を上げたりできる、ポテンシャルのある人です。その人を伸ばして、会社のレベルをグッと上げるチャンスだと捉えてもらえたら、とてもいいなと思います。聞き手の言うとおり、ルールさえ作ってあげれば、そういう人はスイスイ伸び伸びいきます。

図解

中小企業

人材育成と、自社のベースアップの機会にする

大きい企業

ベースラインと環境を整えて、競争優位にする

会社の規模で、捉え方を変える

最初の質問への答えをまとめると、優先順位をかなり高くして、会社の環境とガイドラインを設定しましょう、です。

持ち帰り:「AIに入れないもの」を4つだけ決める

最初の一歩は、「AIに入れないもの」を4つ決めて全員に送り、会社向けのプランに切り替えることです。

4つの例として、顧問先の防災点検の会社では、AIに書かせる業務の記録について、何を書くかより先に「書かないもの」を4つだけ決めました。

図解

秘密情報

社外に出せない社内の情報

個人情報

お客様や社員の、個人が分かる情報

お客様の非公開情報

お客様から預かった、公開されていない情報

パスワード類

ログインの情報や、鍵になる文字列

防災点検の会社が決めた「書かないもの」4つ

短いから、全員が覚えていて、運用が続いています。詳しくは生成AIの社内ルールの作り方に書いています。

4つを決めて送ったら、次の3つを確かめてください。

  • 社員が仕事で使っているAIを、会社は把握しているか。
  • 会社が契約したプランで、社員にアカウントを渡しているか。
  • こっそり使っていた人に、ルールづくりや社内への広め役を任せられないか。

まとめ

社員がこっそりAIを使っていたら、判明した時点で、優先度を高くしてAIのルールと環境を整えます。個人向けのプランは入れた情報が学習に使われることがあるので、会社で使うなら、会社が契約したプランで社員にアカウントを渡すのが前提です。ルールと環境を整えることは、リスクを抑えるだけでなく、採用と事業の競争優位にもなります。こっそり使っていた人は、伸ばせば会社を引き上げてくれる人材です。

最初の一歩として、「AIに入れないもの」を4つ決めて全員に送り、会社向けのプランに切り替えてください。

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