業務の棚卸しのやり方|「AIに渡せる仕事」の洗い出し方【テンプレ付き】

業務の棚卸し——散らばった書類をAIと一緒に一覧表へ整理するイラスト

「御社の業務のなかで、AIに任せたい仕事はどれですか」。生成AI顧問の初回セッションで、私が最初に置く質問です。そして、いちばん会議室が静かになる質問でもあります。ツールの話なら盛り上がるのです。ChatGPTとClaudeはどちらがいいのか、料金はいくらか、セキュリティは大丈夫か。ところが「で、何をさせるのか」になった瞬間、言葉が止まる。累計約15社の顧問と30社超の支援を重ねて、いまは確信しています。AI導入の最初の壁は、ツール選定でも予算でもなく、「AIに任せたい仕事を、具体的に言えない」ことです。

この壁の突破口が、業務の棚卸しです。棚卸しと聞くと、AIを使う前の地味な準備運動に見えるかもしれません。違います。後で書くとおり、棚卸しは準備ではなくAI投資そのものです。この記事では、私が顧問先で実際にやっている棚卸しのやり方——1週間の「業務メモ」、仕分けの3つの軸、4象限マトリクス、そのままコピーして使える棚卸し表テンプレート——を、手順の順番どおりに全部公開します。なお、棚卸しを含むAI導入90日間の全体像はAI導入の進め方の記事に書きました。本記事は、その全体の最初の一歩である棚卸しだけを深く掘る、完全版のガイドです。


赤堀亘
執筆・監修 AiWiLL株式会社 代表取締役 赤堀亘

日本テレビ・Bitget等でのB2Bマーケティング実務を経て、2023年にSHIFT AI創業へ参画。コミュニティ・スクール責任者として2年で3万人規模へのグロースを主導。2026年、静岡県熱海市でAiWiLL株式会社を創業。生成AI顧問「WiLLAGENT」として、防災設備・不動産管理・旅館・飲食など現場型の中小企業に入り、売り上げ向上に寄与するマーケティングや営業施策をどうAIで質を上げ、数を増やすかを一緒に考え抜き、人手不足のなか報告書・見積・マニュアルづくりといった実務をいかにAIで省くかといった、AIを使った事業づくりを伴走支援している。生成AI研修・Eラーニングの監修も担当。企画したイベント・ウェビナーは累計112件、参加者は1万人超。

AIエージェント・新規事業リサーチ・マーケティングの実践セミナー3本の本編と、WiLLAGENTのサービス説明PDFを、無料の資料セットとして公開しています。→ 無料資料セットを受け取る

目次

なぜ棚卸しが「AI投資そのもの」なのか

先に、いちばん大事な理屈を1つだけ。AIの出力の質は、指示文の上手さではなく、AIに渡した文脈——会社の情報・過去の成果物・仕事の材料——の質と量で決まります。そして実務では、その文脈は口頭ではなくファイルで渡します。過去の議事録、よくできた提案書、毎月の報告書の様式。AIはこれらを読んだ分だけ、あなたの会社の社員らしく働きます。

ここで棚卸しの正体が見えてきます。業務の棚卸しとは、「どの仕事に時間が消えているか」を数える作業であると同時に、「その仕事の材料が、どのファイルとして社内のどこにあるか」を突き止める作業です。つまり棚卸しの成果物は、時間の一覧表ではなく、AIに渡すべき文脈の在庫リストです。私は顧問先のレクチャーで、これを合言葉にしています。

文脈はファイルで渡す。
だから、棚卸しがそのままAI投資になる。

棚卸し表の1行1行が、AIに渡す文脈の在庫。書き出した分だけAIは戦力になる。

私の進め方は一貫して「棚卸し→ディレクトリ(フォルダ設計)→AI社員に仕事をインストール」の3工程です。棚卸しはその最初の工程で、ここを飛ばすと後の全部が空回りします。フォルダに入れるべき材料が分からず、AIに教えるべき仕事が決まらず、結局「何か聞きたいことがあったら聞く」だけの、賢い検索窓として飼い殺しになる。ツールに月額を払いながらAIが遊んでいる状態は、投資ではなく固定費です。棚卸しに使う1週間は、その固定費を投資に変えるための1週間だと考えてください。

優秀な経営者ほど、自分の業務を把握していない

もう1つ、先に知っておいてほしい現場の事実があります。棚卸しを最初に阻むのは、業務の複雑さではなく「自分の仕事は自分が一番分かっている」という感覚です。私は初回セッションで「社長ご自身の1週間は、何にどれくらい使われていますか」と聞くのですが、即答できた経営者は、正直ほとんど記憶にありません。

誤解しないでください。これは経営者への皮肉ではなく、むしろ逆です。優秀な経営者ほど、判断も処理も速すぎて、無意識で仕事を捌いているのです。見積の確認、銀行への返信、現場からの相談、採用の判断——1つひとつが数分から数十分で流れていくので、本人の記憶には「仕事をした」という手応えしか残らない。自分の呼吸の回数を数えられないのと同じで、熟練の証拠なのです。ただし、AIに仕事を渡すには、この無意識をもう一度言葉に戻す工程がどうしても要ります。それが棚卸しです。ヒアリングで「うちの業務はだいたい把握していますよ」と言った方が、後述の1週間メモをやってみたら、自分の予定表に存在しない仕事が山ほど出てきた——この光景を、私は何度も見てきました。出てきた瞬間の「え、俺こんなにやってたの」という顔まで、だいたい同じです。

「AIに渡せる仕事」を見つける3つの軸

棚卸しというと「業務を全部書き出すこと」だと思われがちですが、書き出しは前半にすぎません。価値は後半の仕分けにあります。書き出した業務を「AIに渡せるか」で見るとき、私が使う軸は3つです。

何を見るか「渡せる」寄りのサイン「人が持つ」寄りのサイン
①頻度週・月に何回発生するか週次・月次で繰り返す年1回・不定期・一度きり
②手順の言語化しやすさ新人に文書で教えられるか手順・型・お手本がある「やってみないと分からない」「相手による」
③材料=ファイルの有無過去の成果物・議事録・データがファイルとして存在するか過去の実物がフォルダにある材料が頭の中と口頭にしかない

①頻度は、投資回収の軸です。AIに仕事を教える——手順を言葉にし、お手本を渡し、出力を直す——には初期コストがかかります。週次・月次で繰り返す仕事なら、この初期コストは数回で回収され、あとは回すたびに利息がつきます。年1回の仕事は、教えるコストが回収しにくいので後回し。まず反復業務からです。

②手順の言語化しやすさは、教えやすさの軸です。判定の目安は「新しく入った社員に、文書で教えられるか」。教えられる仕事はAIにも教えられます。「やってみないと分からない」「ケースバイケース」としか言えない仕事は後回し——ただし永久に渡せないわけではなく、後述の4象限で「分解」の対象になります。

③材料=ファイルの有無は、3つのなかで私が最重視する軸です。理由は冒頭の理屈そのもので、AIは渡された材料の分しか、自社らしく働けないからです。過去の提案書が5本フォルダにある会社の「提案書の下書き」は、明日からAIに渡せます。一方、材料がベテランの頭の中にしかない仕事は、先に「頭の中を書き出す」工程を挟む必要があり、着手が一段重くなる。迷ったら、材料がすでにファイルで存在する仕事から。これが一番外さない判断です。

実務の感覚を1つ足すと、3軸すべて満点である必要はありません。とくに②が△でも、①と③が揃っていれば案外進めます。手順がうまく言葉にできなくても、過去の実物をAIに読ませて「この5本に共通する構成と書きぶりを抜き出して」と頼めば、言語化そのものをAIが手伝ってくれるからです。軸は落第点を探すためではなく、着手の順番を決めるために使ってください。

やり方:1週間の「業務メモ」——会議で聞くより、記録が正確

では、書き出しの実務です。結論から言うと、会議室に集まってヒアリングするより、1週間、自分の仕事を時刻つきでメモするほうが圧倒的に正確です。

これは机上の好みではありません。ヒアリングで作った業務一覧と、同じ人が取った1週間メモの集計を並べると、はっきりずれるのです。人の記憶は、印象に残った大仕事を過大に報告し、毎日無意識にこなしている細かい仕事——返信、確認、転記、探しもの——をごっそり落とします。そして皮肉なことに、AIが最初に得意なのは後者の「記憶から落ちる側」の仕事です。ヒアリングだけの棚卸しは、いちばんおいしい鉱脈を掘る前に終わってしまう。だから私は、棚卸しを聞き取りだけで済ませることを勧めていません。聞くのではなく、記録してもらう。

やり方は次のとおりです。道具はノートでも、スマホのメモでも、自分宛てのチャットでも構いません。

  1. 期間は5営業日。繁忙の特異週は避け、「いつもの1週間」を選ぶ
  2. 仕事の区切りごとに、時刻・やったこと・かかった時間を1行でメモする。粒度は15〜30分単位でよい
  3. 書きもらした時間帯があっても気にしない。完璧な記録ではなく、実態の当たりが目的
  4. 週末に、メモを業務名で束ねて「月あたりの回数×1回の時間」に集計する

メモの実物は、この程度で十分です。

7/7(月)
09:10 メール確認・見積依頼2件に返信(30分)
09:40 A社の月次報告書の下書き(80分)
11:00 週次定例(60分)
13:00 定例の決定事項をチームに展開(25分)
13:30 B社提案の構成づくり。前回の提案書を探すのに手間取る(90分)
15:10 現場からの相談対応(20分)
15:30 求人媒体の原稿手直し(45分)
16:20 経費精算の突合(30分)
17:00 明日の商談の準備・想定問答づくり(40分)

1週間後、このメモは2つの発見を連れてきます。1つは、記憶になかった反復業務。もう1つは、「探す・思い出す」に消えている時間です。前回どうやったか思い出す、あのファイルはどこだったか探す——メモを取って初めて、これが名前のない業務として毎日発生していることに気づきます。

私自身も、「書く仕事」から順にAIへ渡してきた側です。日報も記事も提案資料も、いまは型を教えたAIが下書きまで持ってくる体制になっています。その順番は、自分の業務を棚卸しして、記事・資料・SNS・メール——「書く仕事」の塊が想像より大きいことを認めたところから来ています。人に棚卸しを勧める前に、まず自分の業務で効き目を確かめてきた方法です。

なお、90日ロードマップの記事では、最小版として「終業前5分で、時間を取られた作業を3つメモする」方式を紹介しました。1週間の時刻つきメモがどうしても負担なら、最小版から始めても構いません。精度は落ちますが、止まっているよりずっといい。余力ができたら、この完全版に格上げしてください。

仕分け:「AIに渡せる×頻度」の4象限マトリクス

業務仕分けの4象限マトリクス図解。縦軸=AIに渡せる/人が持つ、横軸=頻度が低い/高い。右上(AIに渡せる×頻度が高い)が最初に任せる仕事

メモの集計ができたら、仕分けです。3つの軸のうち②言語化と③材料をまとめて「AIに渡せるか」の縦軸に、①頻度を横軸に取り、すべての業務を4つの象限に置きます。

頻度が高い
頻度が低い
AIに渡せる
① 最初の任務
今すぐAIに渡す

議事録の整理、定型レポート、返信の下書きなど。ここから1つだけ選んで始める。

③ 二軍
手順書だけ作って待機

年次の資料や不定期の案内文。急がないが、手順書化しておけば次の発生時に1行で呼べる。

人が持つ
② 分解候補
工程を割って一部を渡す

商談・面接・トラブル対応など。仕事まるごとは人が持ち、準備と記録の工程だけAIへ。

④ 聖域
触らない

まれで、かつ人の判断・関係そのものが本体の仕事。AI化の検討対象から外してよい。

各象限の扱いを補足します。①「最初の任務」は宝の山ですが、欲張らないこと。頻度×1回の時間の積が大きく、材料のファイルが揃っているものを1つだけ選びます。最初の1業務を型にできれば、2業務目からは半分以下の労力で立ち上がります。

②「分解候補」が、実は棚卸しの腕の見せどころです。「商談は人にしかできない」で終わらせず、工程に割る。商談そのものは人が持つ。ただし、事前の企業調べ、過去案件からの想定問答づくり、商談後の議事録整理とお礼メールの下書き——前後の工程はAIに渡せます。採用面接も同じで、面接は人、評価コメントの下書きと記録の整理はAI。仕事の単位ではなく工程の単位で見ると、「渡せる仕事」は体感で倍に増えます。

③「二軍」は、急がないぶん見落とされがちですが、年1回の仕事ほど「前回どうやったか」を思い出すコストが高い。手順書だけ先に作っておけば、次の発生時に過去の自分から引き継ぎを受けられます。④「聖域」は、触らないと決めることに意味があります。棚卸しの目的はすべてをAI化することではなく、人が持つべき仕事に時間を返すことです。④と②の本体にあなたの価値があるからこそ、①を渡すのです。

棚卸し表テンプレート全文(コピーして使えます)

仕分けの結果を書き込む棚卸し表のテンプレートです。私が顧問の現場で使っている仕分けの軸を、そのまま列に起こした構成で、ExcelでもスプレッドシートでもNotionでも、そのまま再現できます。記入例を2行入れてあります。

# 業務棚卸し表テンプレート

| No | 業務名 | 頻度 | 1回の時間 | 手順の言語化 | 材料ファイル(何が・どこに) | 判定 | メモ(こだわり・確認者) |
|----|--------------------|------|-----------|--------------|------------------------------|----------|--------------------------|
| 1  | 週次定例の議事録作成 | 週1 | 60分 | ◎ 型がある | 録音データ・過去議事録/共有フォルダ | AIに渡す | 決定事項と宿題を分ける。宿題は担当者名つき |
| 2  | 新規向け提案書の作成 | 月3 | 180分 | ○ 説明できる | 過去提案書5本/営業フォルダ | 分解する | 構成と下書きまでAI。金額と最終文面は人 |
| 3  |                    |      |           |              |                              |          |                          |

◆ 列の書き方
- 頻度         : 週◯回/月◯回/年◯回
- 手順の言語化 : ◎=新人に文書で教えられる ○=口頭なら教えられる △=やって見せるしかない
- 材料ファイル : 過去の成果物・議事録・データが「ファイルとして」あるか。保存場所まで書く
- 判定         : AIに渡す(①)/分解する(②)/手順書だけ(③)/人が持つ(④)
- メモ         : 品質のこだわり・出力の確認者・注意点。後でそのままAIへの指示の材料になる

列の意図を2つだけ補足します。まず「材料ファイル」列に保存場所まで書くのは、この表が次の工程——AIの作業フォルダに材料を集めるディレクトリ設計——の買い出しリストになるからです。場所が書けない業務は、材料が頭の中にある業務だと、その場で判明します。次に「メモ」列。ここには「宿題には担当者名を付ける」「この表現は使わない」といった、あなたの会社の暗黙のこだわりを書いてください。棚卸し表は業務の一覧表ではなく、AIへの引き継ぎ書の下書きです。メモ列が厚い表ほど、AIの初日の出力が良くなります。

運用のルールは3つ。①7割の精度で先に進む。列を美しく埋める作業に2週間かける価値はありません。②顧客の個人情報・非公開情報は表に書かない。業務名と材料の場所だけで足ります。AIに見せてよい情報の線引きはセキュリティと情報入力の記事にまとめてあります。③置き場を1つに決めて、月1回更新する。AI化が進むと「判定」列がどんどん書き換わっていきます。それがこの表の正しい育ち方です。

部門別・棚卸しでよくある発見——「書く仕事」は思っているより大きい

棚卸しの結果には、会社が違っても驚くほど再現性があります。私の見聞きする範囲でいちばん多い発見はこれです。「書く仕事が、業務時間の3〜4割を占めていた」。報告書、議事録、メールの返信、提案書、案内文、社内への説明——本人たちは「書く仕事」とは呼んでいません。「報告」「連絡」「資料準備」という別の名前がついているせいで、束ねて見るまで塊の大きさに気づかないのです。

そしてこれは、朗報です。生成AIが最初に強さを発揮するのが、まさに「書く・整える・変換する」の領域だからです。棚卸しで見つかる最大の時間の塊と、AIの得意領域が、きれいに重なっている。棚卸しが「やってよかった」で終わらず、そのまま成果につながりやすいのはこの構造のおかげです。部門別の定番の発見も並べておきます。

部門棚卸しでよくある発見最初にAIに渡しやすい工程
経営者返信・確認・依頼文など「短い書きもの」が毎日細かく積もっていた返信・依頼文の下書き、会議メモの整理
営業提案書より「過去資料を探して下敷きにする時間」が長かった過去提案書を材料にした新規提案の構成・下書き
経理・総務転記・整形・突合という「作業の間の作業」が主役級だった月次資料の整形・集計、定型案内文
現場・技術作業より「作業を報告書にする時間」が重かった作業メモ・写真から報告書の下書き
広報・マーケ同じ内容を媒体ごとに書き直す時間が大半だった1つの素材から複数媒体への原稿展開

もう1つの定番の発見が、先ほども触れた「探す時間」です。ファイルを探す、前回のやり方を思い出す、誰が知っているか聞いて回る。これは業務一覧には決して載らないのに、メモを取ると毎日顔を出します。そして、この時間は棚卸しの次の工程——材料をAIの作業フォルダに集めるディレクトリ整理——で、AI以前にまず人間側から消えていきます。棚卸しをした会社の収穫として、AIの成果より先に「業務そのものが整理されたこと」が挙がることが多いのは、だいたいこの2つの発見のせいです。

棚卸しの後の一歩——1業務を選んで、AIに仕事をインストールする

棚卸し表が埋まったら、次はいよいよAIの出番です。やることは3つ。

  1. ①の象限から、最初の1業務を選ぶ。基準は「頻度×1回の時間」の積が大きく、材料ファイルが揃っていること
  2. その業務の材料を1つのフォルダに集め、AIの作業場所を作る(ディレクトリ設計)
  3. 最初の1回を一緒にやり、固まった手順をファイルとして残す(AI社員への仕事のインストール)

この2番目と3番目——フォルダの作り方、ルールファイルの書き方、一度教えた仕事を1行の指示で再現する方法——は、「AI社員」の作り方の記事に全手順を書きました。本記事の棚卸しとセットで、そのまま導入初日の教科書になるように作ってあります。また、棚卸しから横展開・自走までの90日間をどう配分するかはAI導入の進め方(最初の90日)の記事をどうぞ。

外部の伴走をつけて進めたい場合は、私のAI顧問の3ヶ月プログラムがこの流れそのものです。初回セッションでやるのは、まさにこの記事の棚卸しからで、全6回の設計図は別の記事で公開しています。読んでいただければ分かるとおり、中身は隠していません。自社でやるか、隣に経験者を置くかの違いだけです。

業務の棚卸しに関するよくある質問

棚卸しにはどれくらい時間をかけるべきですか?

業務メモ1週間+仕分けと表への記入に半日、合計で2週間以内が目安です。ありがちな失敗は、体裁の整った完璧な業務一覧表づくりに1ヶ月かけてしまうこと。棚卸しの目的は網羅ではなく、最初にAIへ渡す1業務を決めることです。7割の精度で仕分けに進んでください。

経営者と社員、誰から棚卸しを始めるべきですか?

推進役の1人からで構いませんが、可能なら経営者自身が一度やることを勧めます。理由は2つ。本文に書いたとおり、優秀な経営者ほど無意識に仕事を処理していて、メモを取ると本人がいちばん驚くこと。そして、どの業務にAIという投資を振り向けるかは結局のところ経営判断であり、自分の時間の実態を知らないまま下す判断は精度が出ないからです。

ヒアリングやアンケートで代用できませんか?

精度は明確に落ちます。記憶は印象的な大仕事を過大に、無意識の反復業務を過小に報告し、AIが最初に得意とするのは後者だからです。ただし0か100かではありません。メモの協力を得にくい部門はヒアリングで当たりをつけ、AI化の本命部門だけ1週間メモを取る、という併用は現実的です。

「AIに渡せるか」の判断に自信が持てません。

迷ったら③材料=ファイルの有無だけで決めてください。過去の成果物やデータがファイルとして存在する業務は、判断を間違えてもすぐ試せて、すぐ戻せます。それでも迷う業務は②分解候補に置き、工程を割って一部だけ渡すのが安全です。棚卸し表の判定列は、運用しながら書き換えていくのが前提です。

AIツールの契約は棚卸しの前と後、どちらですか?

後で大丈夫です。棚卸しはノートとスプレッドシートでできます。渡す仕事が決まってから、ChatGPTやClaudeなど汎用ツールの有料プラン(実費は1人あたり月3,000円〜1万円程度)を契約すれば十分間に合います。先にツールを契約して「何に使うか」を考え始める順番が、いちばん時間を溶かします。

棚卸し表は誰がどう管理すればいいですか?

置き場を1つに決め、推進役が月1回更新する運用を勧めます。AI化が進むと「人が持つ」だった業務が「分解する」に変わるなど、判定列が動き続けるからです。表が個人のPCやチャット履歴に散らばると、せっかくの在庫リストが誰にも使われなくなります。正しい置き場は1つ、最新版はそこにしかない、が原則です。

個人情報を扱う業務は、棚卸し表にどう書けばいいですか?

表に書くのは業務名・頻度・時間・材料の場所までで、個人情報や顧客の非公開情報そのものは書きません。「顧客対応履歴の整理(材料:CRM内)」のような書き方で足ります。その業務をAIに渡す段階になったら、何をどこまで見せるかの線引きを別途設計します。考え方はセキュリティと情報入力の記事にまとめています。

持ち帰り用:業務棚卸しチェックリスト

  1. 「いつもの1週間」を選び、5営業日の時刻つき業務メモを取った
  2. メモを業務名で束ね、「月あたりの回数×1回の時間」に集計した
  3. 記憶にない反復業務と「探す時間」を、業務として一覧に加えた
  4. 各業務を3つの軸(頻度・手順の言語化・材料ファイルの有無)で見た
  5. 4象限マトリクスに全業務を置いた
  6. ①の象限から、最初にAIへ渡す1業務を選んだ
  7. その業務の材料ファイルの保存場所を、棚卸し表に書き込んだ
  8. 「人が持つ」仕事=渡さない仕事を明文化した
  9. 表に顧客の個人情報・非公開情報を書いていないことを確認した
  10. 棚卸し表の置き場を1つ決め、次の一歩(AIの作業フォルダづくり)の予定を入れた

まとめ:AIの話なのに、やることにAIがほぼ出てこない。それが正解

この記事の要点です。

  • AI導入の最初の壁は「AIに任せたい仕事が言えない」こと。突破口はツールではなく業務の棚卸し
  • 棚卸しは準備作業ではなくAI投資そのもの。文脈はファイルで渡す——棚卸し表は、AIに渡す文脈の在庫リストになる
  • 書き出しはヒアリングより1週間の時刻つき業務メモ。記憶は無意識の反復業務を落とし、そこにこそAIの得意分野がある
  • 仕分けは3つの軸(頻度・手順の言語化しやすさ・材料=ファイルの有無)と4象限マトリクス。迷ったら材料の有無で決める
  • 「書く仕事が3〜4割」は最頻出の発見。AIの得意領域と重なっているから、棚卸しはそのまま成果につながる
  • 次の一歩は、①の象限から1業務選んでフォルダを作り、AI社員に仕事をインストールすること

お気づきのとおり、この記事の手順には、AIを操作する場面がほとんど登場しません。ノートにメモを取り、付箋を並べ、表を埋める。それでいいのです。AI活用の成否は、AIに触っている時間ではなく、自社の仕事をAIが受け取れる形に翻訳する時間で決まります。棚卸しはその翻訳の第一章で、ここで書き出した1行1行が、この先何年も、どのツールに乗り換えても使い続けられる会社の資産になります。

まずは月曜日から、5営業日のメモを始めてください。1週間後のあなたは、「AIに任せたい仕事はどれですか」に、具体的な業務名と数字で即答できるようになっています。その状態で読むAI社員の作り方は、まったく別の解像度で見えるはずです。棚卸しから先を体系的な資料で掴みたい方には、無料の資料セットを用意しています。

「自社なら何から始めるべきか」を見つけたい方へ

AI顧問「WiLLAGENT」は、AIを「知る」で終わらせず、会社の仕事で使える状態まで一緒に動かす伴走型AI顧問です。現場に行き、一緒に作り、社内に残す。経営・営業・マーケティング・業務改善まで、現場の課題から優先順位を決めて進めます。

実務での使いどころを学べるAI実践セミナー3本の本編アーカイブと、3か月伴走の内容・支援領域・料金・FAQをまとめたサービス説明PDFを、無料の資料セットとして受け取れます。

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