常時起動PCとは、事務所や自宅に置いた性能の高いパソコンを、スリープさせずに24時間つけたままにして、スマホや軽いノートパソコンからAIに作業を頼む使い方です。寝る前にスマホから「動画編集しといて」と頼めば、朝起きたときには動画ができています。私は中古のゲーミングPCを事務所に置き、Tailscale(自分の端末どうしだけをつなぐ)、RustDesk(画面ごと操作する)、Orca(AIのセッションをスマホと共有する)の3つでつないでいます。性能は事務所に置き、手元は「窓」にする。頭脳はクラウド、手足は家のPC、という考え方です。

赤堀亘
執筆・監修 AiWiLL株式会社 代表取締役 赤堀亘

AiWiLL株式会社代表。AI顧問「WiLLAGENT」で、企業の仕事をAIと人が進められる形にする伴走支援を行っています。記事では、実務で使える手順と、人が確認すべき点を明らかにします。

この記事は、YouTube「AI顧問の現場録」で、事務所の常時起動PCの前で、スライドとスマホからの実演を使って紹介した回の記録です。撮影日(2026年10月11日)時点の内容です。

この記事の結論

  • 常時起動PCは、性能の高いパソコンを1台つけっぱなしにして、手元のスマホや軽いノートパソコンから動かす使い方です。手元の機械の性能は関係なくなります。
  • スマホで撮った動画を事務所のPCへ送るだけで、Claude Codeが編集・サムネイル・YouTubeへのアップ・公開予約まで進めます。PCに会社と自分の情報が入っているので、メールや資料、見積もりもスマホからの指示で出せます。
  • 重いデータ(動画や大きなファイル)は常時起動PCの1台に入れ、計画や設計の考え方だけをクラウドに置きます。
  • つなぎ方は3つ。Tailscaleで自分の端末だけをつなぎ、画面ごと操作するならRustDesk、AIへの指示だけならOrca(またはSSH)を使います。
  • 始めるなら、今あるPCのスリープを「なし」にして、スマホとそのPCにTailscaleを入れるところからです。
  • 会社の情報が入ったPCを外からつなげる状態にするので、つなぐ端末の管理と電気代は先に確かめてください。

動画で見たい方は、YouTube「AI顧問の現場録」の回をどうぞ:寝てる間にAIが働く「常時起動PC」のすすめ|スマホが超高性能PCになる(2026年10月11日の収録)

撮って送るだけで、朝には動画ができている

私がよくやっているのは、スマホで撮った動画を、そのまま番組にする使い方です。気づいたことや、現場で「これはすごく良かった」と思ったことを、スマホでカジュアルに録画します。そのデータを事務所のPCに送り、スマホから「この動画をYouTube用に編集して」と頼みます。

すると、事務所のPCでClaude Codeが動画を編集し、サムネイルを作り、YouTubeにアップして、公開予約までしてくれます。移動中にパソコンはいりません。スマホさえあれば、動画までできます。

図解

  1. 撮る

    スマホで、気づいたことや現場の様子を録画する

  2. 送る

    撮ったデータを、事務所の常時起動PCへ送る

  3. 頼む

    スマホから「この動画をYouTube用に編集して」と指示する

  4. 任せる

    常時起動PCのClaude Codeが、編集・サムネイル・YouTubeへのアップ・公開予約まで進める

スマホで撮ってから、公開予約まで

このPCの中には、会社のことも、私自身の情報も、全部入っています。だからスマホから指示を送るだけで、PCにある会社の情報を使ってAIに作業させられます。お客さんへのメール、会社の資料、見積もりのような仕事も、出先から頼めます。

AIに動画を編集させる仕組みそのものは、AI動画編集は「生成」より「編集」からに書きました。会社の情報をAIが読める形で置いておく考え方は、AIに毎回説明するのは、もうやめようにまとめています。

古いノートパソコンは「窓」になる

私が持ち歩いているのは、いつものスマホと、性能の高くないノートパソコンです。かなり古いLenovoのノートパソコンですが、ひたすら頑丈です。ブラウザが動けば十分、という使い方をしています。

このノートパソコンから、リモートデスクトップで事務所のPCを操作します。つないでしまえば、ノートパソコンの画面に、事務所のPCの画面がそのまま出ます。普段使っているCodexやClaudeの画面を開けば、事務所のPCで動いている作業を、そのまま続けられます。前の日に撮った動画を送ったときも、事務所のPCが編集を進め、その進み具合をノートパソコンで確かめました。

図解

手元(スマホ・古いノートパソコン)

指示を出す、進み具合を見る、できあがりを確かめる

性能はいらない

事務所の常時起動PC

AIが作業する、重いデータを持つ、24時間止まらない

性能と回線はここに集める

手元と、事務所の役割

性能の低いパソコンを外に持ち出しても、作業そのものは、事務所の性能の高いPCが、事務所の安定した回線でやります。AIに限らず、CADやPhotoshop、Logicでの音楽制作のように性能が要る作業も、出先でできます。家でも出先でも、いつもの環境で作業できるようになりました。

きっかけは、持ち歩いていたゲーミングノート

これを始める前は、出先用にゲーミングノートパソコンを買って、いつも持ち歩いていました。基本の作業は、そのノートパソコンでしていました。ところが、困りごとがいくつもありました。

図解

重くて熱い

持ち歩くには重く、熱をかなり持つ

回線に左右される

出先のWi-Fiが悪いと、作業が進まない

閉じると止まる

ふたを閉じれば作業が止まる。スリープしない設定にすると、気づけば電池がない

ファイルがあちこちにある

「このノートパソコンには、そのデータがないんだ」が起きる

ゲーミングノートを持ち歩いていた頃の困りごと

データをクラウドに置いて、それを参照しながら働いた時期もあります。それでも、動画や重いマニュアルを扱うなら、ファイルそのものを手元のディスクに入れて編集するほうが明らかに良い、という場面がかなりありました。

そこで、重いデータは1台のPCの中にちゃんと入れておき、計画や設計の考え方のようなデータだけをクラウドに置く体制にしました。

図解

常時起動PCの中

動画、重いマニュアルなど、重たいファイルそのもの

クラウド

計画や設計の考え方など、軽くて共有したいデータ

データの置き場所

中古のゲーミングPCを、つけっぱなしにする

私の環境は、中古で買ったゲーミングPCです。動画の中で紹介した構成は、CPUがCore i7-12700、GPUがGeForce RTX 3070 Ti、メモリが32GBです。動画編集をさせたり、Claudeを10個、20個と並べて同時に作業させたりしても、全然余裕があります。これくらいの性能があると、とても安心です。これくらいの構成なら、だいたい20万円もしないくらいで買えたりします。

GPUやメモリをもう少し増やせば、自分のPCの中で動画を生成したり、ローカルLLM(自分のPCの中で動かすAI)を使ったりするのも視野に入ります。私はそこまではしていません。画像生成くらいはさせていますが、それくらいなら、この構成で足ります。

このPCは、スリープさせません。本当に24時間、働きっぱなしです。

つなぎ方は3つ

事務所のPCと手元の端末は、次の3つでつないでいます。

図解

Tailscale

自分の端末どうしだけをつなぐ道。常時起動PCにも、スマホ・タブレット・ノートパソコンにも入れる

最初に入れる

RustDesk

常時起動PCの画面を、そのまま手元に出して操作する

画面ごと触りたいとき

Orca(またはSSH)

AIのセッションに、スマホから指示を出す

AIに頼むだけのとき

つなぎ方は3つ

まずTailscaleです。作業に使うスマホ、タブレット、ノートパソコンと、常時起動PCの全部に入れておきます。そうすると、Tailscaleでつながっている自分の端末どうしだけで、常時起動PCとやり取りできる道ができます。Tailscaleの公式ドキュメントでは、暗号化された接続(WireGuard)を使い、自分のネットワークに入れた端末どうしだけが通信できる仕組みだと説明されています(What is Tailscale?)。個人向けのPersonalプランは無料で、6人まで、端末の数は無制限です(Tailscaleの料金ページ、2026年10月12日に確認)。

事務所のPCの画面をそのまま操作するときは、RustDeskを使っています。RustDeskはオープンソースのリモートデスクトップで、自分で用意したサーバーで動かすこともできます(RustDeskの公式ドキュメント)。

指示を出すだけなら、SSHという通信の仕組みでも、かなり快適です。ただ、私がおすすめしたいのはOrcaです。Orcaは、AIエージェントを動かすための開発環境で、スマホのアプリとPCがつながります。モバイルアプリを開くだけで、PCで並行して動いているAIのセッションに、そのまま指示を出せます。OrcaそのものはOrca(オルカ)とはで紹介しています。

使ってわかった、6つのありがたさ

常時起動PCにして、ありがたいと感じたことは次の6つです。

図解

手元の性能が関係なくなる

動画編集できないノートパソコンからでも、動画編集を頼める。電池切れも心配しなくていい

閉じても寝ても止まらない

手元のパソコンを閉じても、寝る前に重い作業を頼んでも、事務所のPCは動き続ける

どこでも、いつもの環境

研修会場でも電車の中でも、スマホからいつもの環境で頼める

環境がひとつになる

重いファイルは常時起動PCに入れるだけ。持ち歩くノートパソコンは256GBで十分になった

思いついたら、すぐ手が動く

アイデアは鮮度が大事。思いついた瞬間にAIへ渡せる

回線が地味に効く

出先の電波が悪くても、作業する場所の回線は安定している

常時起動PCにして、ありがたかったこと

一番大事だと思うのは、思いついたらすぐ手が動くことです。アイデアは生き物なので、鮮度が大事です。

先日、私が研修を受ける側で参加したときのことです。内容がとても良かったので、メモをたくさん取り、自分のAIの記憶にも残しておきたいと思いました。いいアイデアが出たときに、「こういうことはできるかな」と壁打ちしたり、試作のデモを作ってもらったりもしたい。研修会場はスマホしか触れない場所でしたが、手元のスマホから、いつもの環境ですぐに作業を頼めました。電車に乗っている間に、スマホから重い作業を頼んだこともあります。

思いついた瞬間に、とりあえずAIに考えさせる。いつでも、どんな作業でも頼める状態を作っておくことは、チャンスを逃さない、機会損失を防ぐという意味もあると思っています。

環境がひとつになったことも大きいです。「家のパソコンにあるあの作業をしたい」というときも同期を待たなくていいですし、持ち歩く端末にファイルを入れなくて済みます。今、持ち歩くノートパソコンのSSDは256GBですが、これで十分になりました。持ち歩くパソコンは、かなり安いもので済むようになりました。

地味に効くのが回線です。家や出先では、Wi-Fiがない、電波が悪い、ということがあります。作業させる場所の環境さえ整っていれば、回線の問題もかなり解決します。

スマホから動かしてみる

実際に、スマホから事務所のPCを動かしてみます。

まずRustDeskです。スマホでつなぐと、スマホに出ている画面と、PCに出ている画面が同じになります。スマホで「明日の天気を教えて」と入力すると、PCの画面にも同じ文字が出てきます。エンターを押せば、PCの側で動き出します。デスクトップをそのまま操作できるので、スマホからPCのブラウザを開くこともできます。

ただ、スマホの小さい画面でデスクトップを触るのは、さすがに触りづらいことがあります。そこで使うのがOrcaです。デスクトップでもスマホでもOrcaを開いておくと、同じセッションが同期します。ターミナルで動いているAIエージェントのセッションを、スマホから操作できます。

再現イメージ

私(スマホ)

明日の天気を教えて

AI(事務所のPC)

明日の予報を調べました。出典のリンクを添えてお伝えします。

私(スマホ)

あさってのも教えて

AI(事務所のPC)

あさっての予報です。

スマホのOrcaから、事務所のPCのAIに頼む流れ(実演を文字にしたもの。AIの返答は要約で、実際の文面ではありません)

スマホには、さっきPCで頼んだ「明日の天気を教えて」のセッションが、ちゃんと出ています。ここでスマホから「あさってのも教えて」と指示を出すと、PCのOrcaがスマホからの指示を受けて動き出します。作業しているのは、事務所の本体のPCです。

始めるなら、この順番

環境の作り方は、次の順番です。

図解

  1. 置く

    常時起動させるPCを置き、いつもの作業環境(AIエージェントや資料)を入れる

  2. 止めない

    そのPCのスリープを「なし」にする

  3. つなぐ

    そのPCと、スマホ・手持ちのノートパソコンにTailscaleを入れ、つながる状態にする

  4. 選ぶ

    画面ごと操作したいならRustDesk、AIのセッションだけならOrca

常時起動PCを始める順番

Tailscaleを入れたら、スマホや手持ちのノートパソコンに常時起動PCのアドレスを登録して、つながる状態にします。そのうえで、デスクトップを画面ごと操作したいならRustDesk、AIのセッションだけをつなぎたいならOrcaを使えば、かなり快適になります。

この方法が向かない場合と、先に決めること

どんな人にも同じように合うわけではありません。次のことは、始める前に確かめてください。動画では話していない補足も含みます。

  • ブラウザのAIだけで足りている:重いファイルを扱わず、長い作業をAIに任せることもないなら、まだ常時起動PCはいりません。この話は、動画や重いファイルを扱い、AIエージェントに長い作業を任せる人向けです。
  • 会社のPCを使う:会社の情報が入ったPCを、外からつなげる状態にすることになります。会社のPCで始めるなら、社内のルールや、情報システムの担当の方に先に確かめてください。
  • つなぐ端末を管理できない:Tailscaleには、自分の端末だけを入れます。スマホやノートパソコンをなくしたら、Tailscaleの管理画面からその端末を外してください。
  • 電気代:24時間つけたままにするので、電気代がかかります。消費電力は使い方で大きく変わり、私は測っていません。仮に平均100Wなら、100W×24時間×30日で72kWh。全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価31円/kWh(税込、2022年7月22日改定)で計算すると、月に約2,230円です。平均200Wなら約4,460円です。自分のPCの値は、コンセントにつなぐワットチェッカーで測れます。出典:全国家庭電気製品公正取引協議会「よくある質問」Q7。Q&Aページ
  • 止まることはある:Windowsの更新による再起動や停電で、PCが止まることはありえます。出先からは直せないこともあるので、締め切りのある作業は早めに頼み、進み具合を確かめてください。

持ち帰り:今あるPCで、今日試す

最初の一歩は、今あるPCのスリープを「なし」にして、スマホとそのPCにTailscaleを入れてみることです。新しいPCを買う前に、今あるPCで「家に置いて、手元から頼む」を一度試してみてください。

試したら、次の3つを確かめます。

  • スマホから、Tailscale経由でそのPCにつながるか。
  • 寝る前にAIへ作業を1つ頼み、朝に結果ができているか。
  • そのPCに、AIに作業させたい重いファイル(動画や資料)が入っているか。

PCの中を、AIが読める形に整えておくと、スマホから頼める仕事が増えます。決まった頼み方を1行で呼び出せるようにしておくやり方は、AIに教えた仕事を1行で再現する「スキル化」入門に書いています。

まとめ

常時起動PCは、性能の高いPCを1台つけっぱなしにして、手元のスマホや軽いノートパソコンから動かす使い方です。重いデータと性能は事務所のPCに集め、手元は「窓」にします。つなぎ方は、Tailscaleで自分の端末だけをつなぎ、画面ごとならRustDesk、AIのセッションだけならOrca。思いついたらすぐ指示を出せて、実際に動くのは家の中の、安全で安定した環境です。頭脳はクラウド、手足は家のPC。一家に1台、性能の高いPCを置いておくと、AIがとても使いやすくなります。

最初の一歩として、今あるPCのスリープを「なし」にして、スマホとそのPCにTailscaleを入れてみてください。

※撮影日(2026年10月11日)時点の内容です。Tailscaleの料金・プランは2026年10月12日に公式サイトで確認した内容で、変わることがあります。電気代は仮の消費電力で計算した目安です。

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