「AIで提案書が作れるらしい」と聞いて試した営業責任者が、だいたい同じ場所で止まります。ChatGPTに「◯◯業界の会社向けに、うちのサービスの提案書を作って」と頼むと、数十秒で見出しの整った提案書らしきものが出てくる。一瞬「おお」となる。ところが読み込むと、どこの会社が出しても成立する内容で、自社の強みも相手の事情も入っていない。結局ほぼ全部書き直して、「AIは提案書には使えないな」という結論だけが残る——私は生成AI顧問として累計15社、研修や講座を含めると30社を超える会社を支援してきましたが、営業部門からのAI相談は、かなりの割合でこの「それっぽいが薄い」の話から始まります。
先に結論を書きます。原因は指示文(プロンプト)の下手さではありません。下敷きの不在です。提案書の質は「文章力」ではなく「参照の質」で決まります。あなたの会社が過去に勝ってきた提案書の型を、ChatGPTは知りません。私の会社では、過去の提案書を「下敷き」としてAIに渡し、提案資料の組み立てそのものを型化した結果、新規案件の下書きが1行の指示で出てくる体制になっています。この記事は、その仕組みの作り方の全部です。下敷きの選び方、フォルダの作り方、指示文の実物、出てきた下書きの直し方まで、私が実際にやっている順番のまま書きます。
日本テレビ・Bitget等でのB2Bマーケティング実務を経て、2023年にSHIFT AI創業へ参画。コミュニティ・スクール責任者として2年で3万人規模へのグロースを主導。2026年、静岡県熱海市でAiWiLL株式会社を創業。生成AI顧問「WiLLAGENT」として、防災設備・不動産管理・旅館・飲食など現場型の中小企業に入り、売り上げ向上に寄与するマーケティングや営業施策をどうAIで質を上げ、数を増やすかを一緒に考え抜き、人手不足のなか報告書・見積・マニュアルづくりといった実務をいかにAIで省くかといった、AIを使った事業づくりを伴走支援している。生成AI研修・Eラーニングの監修も担当。企画したイベント・ウェビナーは累計112件、参加者は1万人超。
AIエージェント・新規事業リサーチ・マーケティングの実践セミナー3本の本編と、WiLLAGENTのサービス説明PDFを、無料の資料セットとして公開しています。→ 無料資料セットを受け取る
なぜ「それっぽいが薄い」提案書ができるのか
まず、なぜああいう提案書ができあがるのかを片づけておきます。理由は単純で、AIの出力の質は、AIが直前に読んだものの質を超えないからです。何も渡さずに提案書を頼んだとき、ChatGPTが参照しているのは、学習した「世の中の平均的な提案書」です。だから出てくるのは、構成は整っているのに誰の心にも刺さらない、平均点の文書になります。悪いのはAIでも、あなたの指示文でもありません。読ませるものを何も渡していない、それだけです。
一方で、あなたの会社には勝ちパターンがあるはずです。どの順番で話すと相手が乗ってくるか。どの実績を最初に見せると信頼されるか。価格をどこでどう出すか。競合と比べられたときに何を言うか。エース営業の提案書には、そういう判断が全部染み込んでいます。そしてその勝ちパターンを、世界中のどのAIも学習していません。社外に出たことがない情報だからです。
つまり「AIで提案書」の勝負は、指示文の書き方が上手いかどうかではなく、自社の勝ちパターンをAIが読める形にして渡せるかどうかで決まります。ゼロから書かせた場合と、下敷きを渡した場合で何が変わるか、表にします。
| 観点 | ゼロから書かせる | 下敷き(過去の勝った提案書)を渡す |
|---|---|---|
| 出てくる構成 | 世の中の平均的な提案書の型 | 自社が勝ってきた提案の型 |
| 文体・トーン | AIの標準文体(丁寧だが没個性) | 自社の提案書の文体に寄る |
| 強みの見せ方 | 一般論の箇条書き | 勝った提案書の実績の出し方を再現 |
| 相手の課題 | 業界の一般的な課題を並べる | 下敷き+商談メモの言葉で言い当てにいく |
| 修正量 | ほぼ全編書き直し | 相手固有の部分に集中できる |
| 品質の安定 | 頼むたび・人によってばらつく | 下敷きが同じなら誰が頼んでも安定 |
この構造は提案書に限った話ではなく、「AI社員」の作り方の記事で書いた「お手本は指示文より雄弁」という原則の、営業版です。指示文を磨く努力に意味がないとは言いませんが、順番が逆です。先に下敷き、指示文はその後。私はこの順番だけは、どの顧問先でも譲らずに通しています。
勝った提案書には「型」がある——「下敷き」という考え方
この記事で言う「下敷き」を定義しておきます。下敷きとは、AIに新しい提案書を書かせるときに参照させる「過去に勝った提案書3〜5本」と「それぞれの勝因を言語化したメモ」のセットのことです。テンプレートとは違います。テンプレートは空欄を埋める枠ですが、下敷きは考え方ごと写すお手本です。枠に言葉を流し込むのではなく、「この会社はこういう相手に、こういう順番で、こういう見せ方をしたときに勝ってきた」という判断のパターンをAIに写させます。
人間の育成に置き換えると分かりやすいはずです。新人営業に「良い提案書を書け」と口で説明するのと、エースが受注した提案書を3本読ませて「なぜこれで勝てたか」を添えるのと、どちらが早く育つか。間違いなく後者です。AIも同じで、抽象的な指示より具体的なお手本のほうが、はるかに正確に意図が伝わります。私はこれを「コンテキスト(読ませる情報)は、プロンプト(指示文)より桁違いに重要」と表現していて、AiWiLLの支援全体の根幹に置いている考え方です。
私の会社の実例を、構造だけ書きます。AiWiLLでは提案資料の組み立てを型化していて、過去の提案書と構成の考え方を「下敷きセット」としてフォルダに常備しています。新しい商談が発生したら、先方の情報を案件フォルダに置いて1行指示すれば、下書きの初稿が出てくる。日報の作成やSEO記事の入稿と同じ「1行で呼べる仕事」の一つになっています。最初からこうだったわけではなく、下敷きと勝因メモを揃える地味な仕込みを先にやったから、この体制になりました。
同じ型は提案書以外でも動きます。2025年5月に試したのは、過去のX投稿を4本ファイルにして渡し、そこから投稿プロンプトを作り、今回のmemoだけで新規投稿を出す——という4ステップ。過去の報告書を数本読ませて書き方をプロンプト化する運用も同じで、「過去の勝ち筋(お手本)+今回だけの材料」という構造は、提案書でも発信でも報告書でも共通です。ここからは、提案書に絞った仕込みの手順を4ステップで書きます。
仕組みの作り方——4ステップ
全体像は次のとおりです。STEP1〜3が仕込みで、丁寧にやって半日。STEP4は案件が発生するたびに回す運用側で、初稿が出るまで数分です。

STEP1:過去の提案書から「勝った3〜5本」を選ぶ
材料はすでに社内にあります。過去の提案書のうち、次の3条件で選んでください。
- 受注に至った提案書であること——「よく書けている」ではなく「勝った」が基準です
- 営業チーム自身が「良い提案だった」と納得していること——値引きだけで取った案件、相手都合のまぐれ受注は外します
- 相手のタイプが散っていること——業界・企業規模・新規か既存か、が偏らないように選びます
3〜5本という本数には理由があります。1本では、その案件専用の論理までAIが写してしまい、2本目の相手に前の相手向けの理屈が残ります。逆に10本も渡すと今度は型がぼやけて、平均化が始まります。「どの案件にも共通する型」と「案件ごとに変わる部分」をAIが見分けられる本数が、自社の運用と顧問先で試してきた範囲の実感として、3〜5本です。
STEP2:1本ごとに「勝因メモ」を書く
選んだ提案書1本ごとに、「なぜこれで勝てたのか」を言語化した短いメモを作ります。長文はいりません。項目は4つ、5〜10行で足ります。
# 勝因メモ:◯◯社向け提案(受注)
## 相手はどんな会社で、何に困っていたか
- (業界・規模・商談で出ていた課題を2〜3行で)
## この提案のどこが刺さったか
- (営業担当の記憶でよい。「実績を先に見せたら空気が変わった」など)
## 構成・見せ方の工夫
- (課題の言い当てを1ページ目に置いた、プランを3段で見せた、など)
## 反省点・次はこうする
- (値引きの出し方が早かった、決裁者向けの1枚が足りなかった、など)
正直に言うと、4ステップの中でここが一番面倒です。そして一番効きます。提案書のファイルだけをAIに渡しても、AIには「どれが良い提案書で、何が良かったのか」までは分かりません。勝因メモがあって初めて、AIは真似すべき点を特定できます。私はこの工程を省かないことに一番こだわっていて、顧問先でも必ず、営業担当本人に「なぜ勝てたと思うか」を聞きながら書いてもらいます。担当者の頭の中にしかなかった勝てた理由が言葉になる——この30分は、AIのためというより、自社の営業の棚卸しそのものです。メモを書く過程で「うちはこういうときに勝つのか」と自分たちの勝ちパターンに初めて気づく、という反応を私は何度も見てきました。
STEP3:フォルダに「下敷きセット」を作る
提案書と勝因メモが揃ったら、AI専用の作業フォルダに置きます。私が使っている基本形はこれです。
提案書ワークスペース/
├ ルールファイル(CLAUDE.md/AGENTS.md)
├ 00_下敷きセット/
│ ├ 提案書_A社向け.pdf
│ ├ 提案書_A社向け_勝因メモ.md
│ ├ 提案書_B社向け.pdf
│ ├ 提案書_B社向け_勝因メモ.md
│ └ …(3〜5セット)
├ 01_会社情報/
│ ├ 会社案内.pdf
│ ├ 実績一覧.md
│ └ 料金表_現行.md
└ 02_案件/
└ (新規案件ごとにフォルダを作る)
置き方のルールは3つです。第一に、提案書と勝因メモは必ずセットで置く。ファイルだけの下敷きは効きが半分になります。第二に、会社情報は最新版だけを入れる。古い料金表が混ざったフォルダのAIは、古い価格で堂々と提案書を作ります。第三に、見せてよい情報だけを入れる。顧客名や取引条件の扱いに迷う提案書は、社名をマスキングするか、下敷きから外してください。AIに渡す情報の線引きは「見せない、ではなく必要な分だけ必要なときに見せる」が私の基本方針で、考え方の全体はセキュリティと情報入力の記事に書いています。
STEP4:新規案件は「先方情報+下敷き」で下書きを出す
仕込みが済めば、新規案件でやることは2つだけです。①案件フォルダを作り、先方情報を放り込む。商談メモ、議事録、先方のWebサイトから分かる事業内容、商談で出てきた課題。ここでいちばん効くのが商談議事録で、相手の生の言葉がそのまま「課題の言い当て」の材料になります(議事録を次の仕事に変える流れは議事録AI活用の記事に書きました)。②1行指示する。それだけです。
▲ 仕込み後のやり取り(再現イメージ)。指示は1行になり、構成や参照先の説明は不要になる
初稿が数分で出てくるのを自社の運用で最初に見たとき、便利だという感想より先に、「提案書を書く時間の長さを、がんばりだと思っていた自分」が少し恥ずかしくなりました。この仕組みができると、勝負どころは書く時間ではなく、下敷きの質と、出てきた下書きをどう直すかに移ります。直し方は後半で詳しく書きます。
指示文の実物——「下敷き参照型」プロンプト
下敷きが先、指示文は後——と言いつつ、指示文に工夫がいらないわけではありません。ここでは私が使っている構造をそのまま出します。まず、うまくいかない指示から。
製造業の会社向けに、業務効率化コンサルティングサービスの
提案書を作ってください。説得力のある内容でお願いします。
これが「それっぽいが薄い」の製造機です。参照すべきものを何も指定していないので、AIは平均的な提案書を書くしかありません。下敷き参照型は、こうなります。
# 提案書の初稿作成
## 参照するもの(この順番に読む)
1. 00_下敷きセット/ の提案書3本と勝因メモ
2. 01_会社情報/ の会社案内・実績一覧・料金表_現行
3. 02_案件/B社/ の商談メモと先方情報
## 作るもの
- B社向け提案書の初稿(構成は下敷きの型に合わせる)
- 保存先: 02_案件/B社/提案書_初稿.md
## 守ること
- 課題の整理は、B社の商談メモに出てきた言葉を使う
- 実績は 01_会社情報/実績一覧 にあるものだけ。数字の創作は禁止
- 価格は書かず【要確認】と空欄にする
- 分からない点は推測で埋めず、最後に「確認事項リスト」として出す
ポイントは3つです。①参照の順番を指定する。AIは場所と順番を教えられて初めて、意図どおりに資料を読みます。②使ってよい情報を縛る。実績も数字も「実績一覧にあるものだけ」と限定し、価格は空欄にさせる。AIの数字の創作を、注意ではなく仕組みで防ぎます。③分からないことを質問させる。推測で埋めさせず、確認事項として出させる。この確認事項リストがそのまま「次の商談で聞くことリスト」になるのは、やってみて気づいた副産物でした。
そしてこの指示文は、毎回書くものではありません。一度ファイルとして保存すれば、次回からの指示は冒頭のやり取りのとおり1行です。書く時間より、この構造を一度作る時間に投資してください。
下書きの直し方——AIの初稿は「7割」と考える
下敷き参照型で出てきた初稿の完成度を、私は「7割」と見ています。自社の運用と顧問先で見てきた範囲の実感値ですが、構成・骨格・標準的な文章という「時間を食うわりに差がつかない7割」は仕上がっていて、受注を分ける残り3割が空いている、という感覚です。だから直しは、この3割にだけ集中します。優先順位つきで3つ。
- 相手固有の文脈——課題の言い当てが、商談で相手が実際に使った言葉になっているか。決裁者は誰か、過去に何を試して失敗しているか、社内の誰を説得する資料なのか。ここは商談の場にいた人間にしか書けません。逆に言えば、営業が頭を使うべき仕事はここに凝縮されます。
- 「なぜ自社か」の一段——競合ではなくうちに頼む理由。下敷きから写された一般形のままになりやすい箇所なので、この案件の言葉で書き直します。
- 数字と固有名詞の全件検証——品質改善というより事故防止です。次で詳しく書きます。
3つ目を独立して強調するのは、AIが下敷きに含まれる過去案件の情報を、新しい提案に混ぜることが実際にあるからです。私の運用では、送付前に次の5点を機械的に全件チェックします。
- 価格・料金——過去案件の価格や値引き条件が紛れていないか
- 社名・人名——下敷き元の顧客名・担当者名が残っていないか
- 実績の数値——実績一覧と一致するか。丸められたり盛られたりしていないか
- 日付・期間——納期・契約期間が過去案件のままになっていないか
- サービス名・プラン名——廃止したプランや旧名称が出ていないか
「AIが書いたので間違えました」は、受け取った相手には関係のない話です。最終確認と責任は人間が持つ。私はここだけは、どれだけ体制が育っても自動化しないと決めています。
やってはいけない3つ
この仕組みを壊す典型的な失敗を、先回りして3つ書いておきます。どれも、私が相談を受けてきた中の頻出パターンです。
- ①ゼロから書かせる——ここまで読んだ方には繰り返しになりますが、最頻出なので最初に置きます。指示文をどれだけ磨いても、参照ゼロの提案書は薄い一般論に着地します。「AIが使えない」のではなく「何も読ませていない」だけ。うまくいかないときに見直すのは指示文ではなく、フォルダの中身です。
- ②下敷きを1本だけにする——1本だけ渡すと、AIは「型」ではなく「その案件」を写します。前の相手向けの論理や業界の話が新しい提案に残り、読み手には既製品の流用のような違和感として伝わります。共通の型を抽出させるには、複数本と勝因メモが要ります。
- ③出しっぱなしで送付する——初稿をそのまま相手に送ることです。7割の完成度のまま届くうえ、数字や固有名詞の混入を検証していない状態は、事故の一歩手前です。提案書は、たった1通で信頼を失える文書です。AIで浮いた時間の一部は、必ず検証と残り3割の作り込みに戻してください。
提案書の先へ——見積書・会社紹介・営業メールに横展開する
下敷きセット方式は、提案書専用の技ではありません。「過去の良い成果物」+「良かった理由のメモ」を参照させて新しい成果物を作るという構造は、営業まわりの文書のほぼ全部に通用します。
- 見積書の説明文——過去の見積書から、条件の書き方・プランの見せ方を写す
- 会社紹介資料——反応の良かった紹介の流れを下敷きに、相手の業界向けに組み替える
- 営業メール——返信につながったメールを下敷きセットにする(件名・長さ・締めの型)
- セミナー・勉強会資料——手応えのあった回の構成を写して新テーマに展開する
私の会社では、提案資料だけでなく日報の作成やSEO記事の制作・入稿まで同じ方式で型化して、それぞれ1行指示で呼べる状態にしています。手順そのものに名前をつけて、誰が呼んでも同じ品質で再現できる形にする——この先の話は「スキル化」入門の記事で扱います。提案書が1つうまく回ることはゴールではなく、営業部門の仕事を1つずつ、AIが働ける形に翻訳していく入口です。
もう一つ、見落とされがちな副産物があります。下敷きセットと勝因メモは、AIのためだけの資産ではありません。新人営業の教材そのものです。エースの提案書と勝因が言語化されてフォルダにある会社と、エースの頭の中にしかない会社。この差は、担当者が異動しても辞めても勝ちパターンが会社に残るかどうか、という事業の継続性の差になります。AIのために作った仕組みが、人の育成にそのまま効く——下敷きセットを作った会社が最初に驚くのは、たいていここです。
よくある質問(相談の場で実際に聞かれる順)
Q1. 提案書はPowerPointで作っています。AIで作れますか?
作れます。ただし役割分担が要ります。AIが得意なのは構成・ロジック・文章で、スライドの見た目の仕上げは人間(または自社のデザインテンプレ)の仕事です。おすすめの分担は、「1枚ごとの見出し+載せる要素+そのページで話すこと」まで、いわゆるスライド構成案の粒度でAIに下書きさせ、PowerPointへの流し込みと整形を人間がやる形です。下敷きにする過去の提案書は、PDFに書き出せばそのまま読ませられます。
Q2. 「勝った提案書」が3本もありません。
創業して間もない会社や、新規事業の立ち上げ期にはよくある状態です。その場合は、受注した1本+惜しくも負けたが手応えのあった1本+「こう書きたい」と思える理想に近い構成の1本、の混成で始めてください。負けた提案書には勝因メモの代わりに「何が足りなかったか」のメモを添えると、避けるべきパターンとして機能します。下敷きセットは最初に完成させるものではなく、受注が出るたびに1本足して育てていくものです。
Q3. 顧客名の入った過去の提案書をAIに読ませて大丈夫ですか?
2つ守れば、実務上の線は引けます。①入力内容をAIの学習に使わせない設定(学習オプトアウト)を必ずオンにする。②それでも扱いに迷う案件——秘密保持の厳しい相手や係争中の案件など——の提案書は、社名をマスキングするか下敷きから外す。方針は本文にも書いた「見せない、ではなく必要な分だけ必要なときに見せる」です。線引きの具体的な考え方はセキュリティの記事で、顧問先に配っている教材ごと公開しています。
Q4. どのAIツールが必要ですか?
フォルダとファイルを読めるAIエージェント(Claude Code、Cowork、Codexなど)なら、この記事の仕組みがそのまま組めます。ChatGPTのようなチャット型でも、プロジェクト機能に下敷きセットを登録すれば近いことは可能です。実費の目安は1人あたり月3,000円〜1万円程度。ただ、順番だけは間違えないでください。ツールの選定より、下敷きセットを作るほうが先です。下敷きセットはどのツールに乗り換えても持ち運べる、自社の資産です。
Q5. 下敷きにした過去案件の内容が、新しい提案に混ざりませんか?
混ざることがあります。だから、注意ではなく仕組みで防ぎます。指示文で「実績は実績一覧にあるものだけ」「価格は空欄」と縛り、送付前に価格・社名・実績数値・日付・サービス名の5点を全件検証する。この2段構えを崩さなければ、実害には至りません。本文で書いた「出しっぱなし送付」だけは、どれだけ運用に慣れても省略しないでください。
Q6. 営業チーム全員で使うには、どうすればいいですか?
まず1人で回して、下敷きセットと指示文ファイルを固めてから展開してください。共有するのは「下敷きセット+勝因メモ+指示文ファイル+送付前チェックリスト」の4点で、これがそのまま営業チームの共有資産になります。注意点は配り方で、各自にコピーを配ると更新のたびに古いコピーが残って崩れていきます。共有の仕組みの作り方はコンテキストのチーム共有の記事を先に読んでから設計するのがおすすめです。
持ち帰り用:下敷きセット作りチェックリスト
この記事の持ち帰りです。上から順に潰せば、半日で「1行指示で提案書の初稿が出る」入口まで到達できます。
- 過去の提案書から「勝った3〜5本」を選んだ(相手の業界・規模・新規/既存が散るように)
- 値引きだけで取った案件・まぐれ受注を下敷きから外した
- 1本ごとに勝因メモを書いた(相手の課題/刺さった点/構成の工夫/反省点)
- 営業担当本人に「なぜ勝てたと思うか」を聞いて、メモに足した
- 下敷きセット用フォルダを作り、提案書と勝因メモを必ずセットで入れた
- 会社案内・実績一覧・現行料金の最新版だけを入れた(古い料金表は外した)
- 学習オプトアウトを設定し、扱いに迷う提案書はマスキングか除外で処理した
- 下敷き参照型の指示文をファイル化した(参照の順番・使ってよい情報の縛り・質問させるルール)
- 新規案件1件で試し、初稿→3割の直し→数字と固有名詞の全件検証まで一度通した
- 「数字と固有名詞は送付前に全件検証」をチームのルールとして明文化した
まとめ——文章力は借りられる。勝ちパターンは自社にしかない
提案書AIの本体は、指示文ではなく下敷きです。①勝った提案書を3〜5本選ぶ→②勝因を言語化してメモにする→③フォルダに下敷きセットを作る→④先方情報+下敷きで下書きを出す。仕込みは半日、その日から提案書の初稿は数分の仕事になります。人間が直すのは、相手固有の3割だけ。そして数字と固有名詞の検証だけは、最後まで人間の仕事です。
AIの登場で、文章力と構成力は誰でも借りられるものになりました。だからこそ、差がつく場所が変わります。何を参照させるか——つまり、勝ちパターンという自社にしかない資産を、AIが読める形にしてあるかどうか。下敷きセットを作った会社から、提案の量と質が同時に変わっていきます。しかもその資産は、AIのためであると同時に、新人が育つ教材にもなる。私はこれを、AI導入の顔をした営業組織づくりだと思って支援しています。
提案書に限らず、会社の仕事を1つずつAIが働ける形に翻訳していく進め方は、AI顧問とは何かの記事に支援の全体像としてまとめています。まず自社のどこから手をつけるかを掴みたい方は、下の無料資料セットをどうぞ。
「自社なら何から始めるべきか」を見つけたい方へ
AI顧問「WiLLAGENT」は、AIを「知る」で終わらせず、会社の仕事で使える状態まで一緒に動かす伴走型AI顧問です。現場に行き、一緒に作り、社内に残す。経営・営業・マーケティング・業務改善まで、現場の課題から優先順位を決めて進めます。
実務での使いどころを学べるAI実践セミナー3本の本編アーカイブと、3か月伴走の内容・支援領域・料金・FAQをまとめたサービス説明PDFを、無料の資料セットとして受け取れます。

