AIは、誰が使うと一番成果が出るのか。私の答えは、その仕事を一番知っている現場のプロです。AIは掛け算なので、使う人の知識が大きいほど、出てくる結果も大きくなります。

赤堀亘
執筆・監修 AiWiLL株式会社 代表取締役 赤堀亘

AiWiLL株式会社代表。AI顧問「WiLLAGENT」で、企業の仕事をAIと人が進められる形にする伴走支援を行っています。記事では、実務で使える手順と、人が確認すべき点を明らかにします。

この記事は、YouTube「AI顧問の現場録」で、AI顧問として入っている顧問先の現場の話をした回の記録です。防災点検の会社、一人で回す飲食店、代替わりした家族経営の旅館、そしてAIより先に社長の時間を空けることから始めた不動産会社の話を、収録の会話から整理しました。

この記事の結論

  • AIは掛け算です。100の知識がある人に100のAIを渡せば1万点になりますが、知識が1の人が使っても100にしかなりません(数字はたとえです)。
  • だから、AIを使えるようにする相手は、現場を回している知識のある人です。防災点検の会社では、もともとAIに縁のなかったマネージャーが、手書きの点検表を写真でAIに渡し、報告書にまとめる流れを作りました。
  • ただ、その人が忙しすぎると、AIは始まりません。忙しすぎる社長の会社では、AIより先に、電話の一次受けを外に任せたり人を採用したりして、社長の時間を空けることから始めました。
  • 最初の一歩は、社長の1日から売上を生まない作業を1つ選んで、AIか人に手放すことです。

動画で見たい方は、YouTube「AI顧問の現場録」の回をどうぞ:【実例3社】点検会社・飲食店・旅館はAIで何が変わった? 現場のプロ×AIは"掛け算"(2026年6月の収録を、編集し直した版です)

AI顧問には、決まったやり方がない

聞き手から最初に聞かれたのは「AIの仕事として、具体的に企業に何を教えているのか」でした。

私がやっているAI顧問(WiLLAGENT)は、経営者の悩みや課題を解決し、売上を上げるために、AIをどう使うかを一緒に考え、一緒に手を動かし、実際に一緒に使って事業を変えていく仕事です。目的も目標も会社ごとに違うので、決まったやり方はありません。AIは曖昧なものを曖昧なまま進められるので、何にでも使えます。だから中身はオーダーメイドになります。

ただ、基本の型はあります。

図解

  1. 話を聞く

    課題、やりたいこと、目的と目標をしっかりヒアリングする

  2. AI社員をつくる

    その会社に合ったAIエージェントと、AIを使う環境を用意する

  3. 基礎を一緒に覚える

    AIを使うための土台を、一緒に勉強する

  4. データと仕事の流れをためる

    会社の情報やワークフローを、AIが使える形で蓄積する

  5. 業務ごとに一緒に試す

    「この業務はこうしたら良くなるのでは」を話し合いながら走る

AI顧問の基本の型(動画で使った図を、記事用に書き直したもの)

うまく進んだ会社では、仕事の始まり方が変わります。始業したら、まずClaude CodeやCodexのようなAIエージェントを立ち上げて、「今日は何をする?」と打ち込むところから仕事が始まります。

防災点検の会社:AIに縁のなかったマネージャーが、写真から報告書をつくる

一番劇的だったのが、熱海の網代で、マンションなどの火災報知器をはじめとした防災設備の点検・保守を行う株式会社WECSです。点検の業務をまとめているマネージャーは、今ではうちの会社で働けるくらいAIを使いこなしています。毎朝、Claude Codeを立ち上げてから仕事を始めています。

もともとAIの仕事をしていた人ではありません。社内の連絡ツールで職人さんとやり取りし、点検で見つかった不備を直してもらうために、表計算ソフトで図面やレポートを作って送る。そういう仕事をしていた人です。

道具は、その時いちばん業務に合うものへ乗り換えてきました。導入した去年の時点では、GensparkやManusが一番合いそうだったので、それを使いました。今年の初めに「Claude Codeが絶対いい」となってからは、一緒にClaude Codeで仕事をするようになりました。

一番面白いのが、報告書づくりです。防災点検では、施設や設備、ビル、旅館などのあらゆる点検項目を、スタッフが手書きで記入します。それを最後に1つの報告書にまとめるのですが、手書きの量が膨大で、整理がとても大変です。そこで、こういう流れができてきました。

図解

  1. 点検表を写真に撮る

    スタッフが手書きで記入したもの

  2. AIに渡す

    撮った写真をまとめて渡す

  3. 点検した項目が出てくる

    AIが読み取って書き出す

  4. Excelの報告書にしてもらう

    書き出した項目を、表に書き込んでもらう

写真を撮るだけで、報告書の下書きに

このマネージャーは、どうやったら仕事を効率化できるかを工夫するのが好きな人でした。いい道具があれば触ってみる人だった、というのも大きいと思います。エンジニアでなくても、ここまでできるようになる。それは、めちゃくちゃ夢があることです。

なお、この報告書が実務で使えるようになるまでには、3か月かかりました。国が定めた様式で複雑なうえに量が多く、正確さを担保するのが難しかったからです。その経緯はAI顧問の1ヶ月目|最初の一手は、目に見えて変わる仕事からに書いています。

一人で回す飲食店:経理は、売上を作る仕事ではない

身近な例では、一人でお店を回している飲食店の経営者がいます。収録の時点では、まだ始めて1か月目くらいでした。

レクチャーは、普段なら会社のオフィスや会議室でやります。このときは地元のスナックで、カウンターの端に並んでパソコンを開きました。「こんなこともできるのか」と大盛り上がりした会話の中で、一番インパクトが大きいと思ったのが、経理の作業です。

時間やっていること
昼仕込み
夕方お店をオープン
夜12時営業終了。締め作業、片付け、翌日の準備
朝方やっと寝る
昼過ぎ起きて、仕込みと、仕入れの経理

収録で聞いた、一人で回す飲食店の1日。

仕入れの経理は、売上を作る仕事ではありません。その時間を他に回せたほうがいいに決まっています。聞き手が言ったとおり、朝に眠れる時間が削られていました。そこで提案したのが、この流れです。

図解

  1. 書類をまとめる

    納品書、領収書、レジのデータ

  2. 写真に撮る

    全部まとめて撮る

  3. AIが仕分ける

    撮った写真を渡すだけ

  4. 会計ソフトに入力する

    入力もAIにお願いする

経理の書類は、写真に撮ってAIに仕分けてもらう(提案した流れ)

この流れが組めれば、たぶん朝1時間は長く眠れます。ただし「朝1時間」は、収録時点での私の見込みで、測った結果ではありません。一人で回しているお店にとって、睡眠はいちばん大事なものです。

別の現場(不動産会社)で、レシートの写真から仕訳の案を作るところまでその場で試した記録は、レシートをチャットに投げたら、仕訳案が返ってきたにあります。

代替わりした旅館:外注を積むより、自分たちでAIを使えたほうが早い

もう1つ、始めたばかりの顧問先が、家族経営の旅館です。代替わりして経営を新しくし、今どきのマーケティング、営業、接客、そしてリピートや口コミの施策までしっかり回していきたい。でも、Webの施策はやっと始めるところで、何もかもが一から、という状態でした。

全部を業者に頼むと、大変なことになります。それなら、自分たちでAIを使えるようになったほうが早いし、たぶん安く済みます。やれることは、いくらでもあります。

図解

ホームページ

まず作る

予約サイト

掲載していく

SNS・お知らせ

発信していく

公式LINE

作る

Googleビジネスプロフィール

整えて、口コミに返事をする

来てくれたお客さん

クーポンの連絡をする

旅館が自分たちでやれること(収録で挙げたもの)

もう1つ、インパクトが大きそうだと思ったのが補助金です。旅館の机や椅子などの備品が古くなってきていたので、更新に補助金が使えるかもしれない、という話になりました。使える制度は地域によっても違います。その調べものをAIにやってもらい、申請に必要な事業計画書などの下書きもAIに作ってもらえば、今の人手のままで、補助金の検討まで進められそうです。制度の内容や対象になるかどうかは、必ず公式の情報や専門家に確認してください。

AIで補助金を調べたあとにどう判断したかの例は、補助金をAIで探したあと、応募を急がず情報収集を続けると決めたに書いています。

忙しすぎる社長:AIより先に、時間を空ける

収録の時点で一番悩んでいたのが、熱海の不動産会社です。社長が忙しすぎて、自分がAIを使えるようになる時間も、あれもやりたいこれもやりたいを実行する時間も取れない。使い方を伝えても、練習する時間がない。これが一番困りました。

使い方や提案は、私がいくらでもできます。でも結局、実務でやるのは社長です。プロの仕事をしているのはその人なので、その人がAIを使うのが一番いい結果になります。

AIは掛け算だと思っているから、100のスキルがある人に100のAIを渡せば、1万点を出せる。でも、その知識がない私が1だとしたら、AIがたとえ100でも、100のものしか出せない。だから、現場をゴリゴリ回せる知識のある人に素晴らしい武器を渡すのが、一番価値が出るAIの使い方だと思っている。

収録での赤堀の発言(言いよどみを除いて整えています)。

使う人使う人の知識AI出てくる結果
現場を回しているプロ1001001万
その現場の知識がない人1100100

数字はたとえです。

そこで今は、AIより先に、社長の時間をどう空けるかに取り組んでいます。ここまで来ると、もはやAIの話ではなく、業務改善の話です。

図解

  1. 電話の一次受けを外に任せる

    社長が電話を全部取ってしまうタイプだったので、電話の一次対応を代行するサービスを使う

  2. 録音から業務マニュアルを作る

    社長の話を録音して渡してもらい、マニュアルづくりを手伝う

  3. 人を採用する

    AIより先に、人を入れる

  4. 新しく入った人を育てる

    社長の仕事を、新しい人に引き取ってもらう

社長の時間を空けるためにやっていること(収録時点で進行中)

録音から業務マニュアルを作る支援で、マニュアルができたあとに何が足りなかったかは、録音からマニュアルを作っても、工程表は埋まらないに書いています。

売上の流れの、どこで止まっているかを探す

聞き手からは、こう言われました。「AIに詳しいというより、こうしたら業務が良くなる、事業が整う、という提案をするのが一番の得意分野なのでは」。

実際、私が話していることは、いつも同じです。ビジネスは、お客さんとのつながりを、どう次へつなげていくかでできています。

図解

  1. 知ってもらう

    認知

  2. 興味をもってもらう

    興味・関心

  3. 比べてもらう

    比較検討

  4. 信用してもらう

  5. 契約してもらう

売上の流れ(ファネル)① 知ってもらってから、契約まで

図解

  1. 使ってもらう

    商品やサービスを

  2. 成果を出してもらう

    価値を感じてもらう

  3. ファンになってもらう

  4. 紹介・拡散してもらう

    また誰かに知ってもらうところへ戻る

売上の流れ(ファネル)② 契約したあとも、流れは続く

この流れがきれいに回ると、事業は上向きます。話を聞いていると、どこで止まっているかが見えてきます。

  • 知ってもらえていない(認知)
  • 比べてもらうための道がない(比較検討の動線)
  • 紹介してもらう道がなく、売って終わりになっている

社長がこの話を社員に何度もしていて、あと一歩踏み出せば動く、ということも多いです。だから、そこも完了させるまで一緒にやる。それがAI顧問のちょうどいい関わり方だと思っています。

持ち帰り:AIを渡す人と、空ける時間を決める

確かめること見るところ
その仕事を一番知っているのは誰かAIに詳しい人ではなく、現場を回している人
その人に、AIを練習する時間はあるかなければ、AIより先に時間を空ける
手放せる、売上を生まない作業は何か経理の仕分け、電話の一次受け、決まった書類づくりなど
手放す先は、AIか人か書類の読み取りや仕分けはAI。電話の一次受けや現場の仕事は、外部の代行や採用
売上の流れのどこで止まっているか認知、比べてもらう道、紹介してもらう道

まとめ

AIは、現場を知っている人が使うと一番効きます。防災点検の会社では、AIに縁のなかったマネージャーが、写真から報告書をまとめる流れを作りました。飲食店では経理を、旅館ではWebの施策と補助金の調べものを、自分たちでAIに任せる提案をしています。一方で、その人が忙しすぎるなら、AIより先に時間を空けるところから始めます。

防災設備・不動産・飲食・旅館の4つの現場の事例を、使った道具や90日の進め方まで整理した記事は中小企業のAI導入事例4選です。

最初の一歩として、社長の1日から売上を生まない作業を1つ選んで、AIか人に手放してみてください。

医療、建設、農業、営業、製造、飲食など、さまざまな仕事の人が並ぶAiWiLLのキービジュアル。AIを使いこなす会社は、イケてる。

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