誰かが気を利かせて「使える指示文100選」を社内に配る。最初の1週間はみんな試す。1ヶ月後、誰も開かなくなる——この光景を、顧問の相談でも、自分の初期の失敗でも、何度も見てきました。需要は本物です。世界中で「ChatGPTに何を打てばいいか」は、検索が死なない問いです。ずれているのは、答えの置き場所です。上手な一文を集めても、会社の材料と、任せる範囲と、人が決める点が無い。返ってくるのは、上手な一般論です。
プロンプト集の代わりに使うのは、仕事の渡し方です。渡す材料、任せる範囲、人が決めること。この3点が揃った依頼文なら、文章がぶっきらぼうでも実務に載ります。この記事は、書籍『ChatGPTを、「AI社員」に育てる方法』付録の依頼テンプレを、現場で繰り返す12の仕事に展開したものです。集めて飾る一覧ではありません。1型をコピーし、空欄を自社に差し替えて、今日渡すための型です。
日本テレビ・Bitget等でのB2Bマーケティング実務を経て、2023年にSHIFT AI創業へ参画。コミュニティ・スクール責任者として2年で3万人規模へのグロースを主導。2026年、静岡県熱海市でAiWiLL株式会社を創業。生成AI顧問「WiLLAGENT」として、防災設備・不動産管理・旅館・飲食など現場型の中小企業に入り、売り上げ向上に寄与するマーケティングや営業施策をどうAIで質を上げ、数を増やすかを一緒に考え抜き、人手不足のなか報告書・見積・マニュアルづくりといった実務をいかにAIで省くかといった、AIを使った事業づくりを伴走支援している。生成AI研修・Eラーニングの監修も担当。企画したイベント・ウェビナーは累計112件、参加者は1万人超。
AIエージェント・新規事業リサーチ・マーケティングの実践セミナー3本の本編と、WiLLAGENTのサービス説明PDFを、無料の資料セットとして公開しています。→ 無料資料セットを受け取る
なぜ「使える指示文」の配布から始めると止まるのか
止まる理由は、使う人の怠慢ではありません。構造が3つ欠けています。
| 欠けているもの | 配布された一文で起きること | 仕事の渡し方だとどうなるか |
|---|---|---|
| 材料 | 自社の商品も顧客も読まずに答える | 読むファイルの場所を先に渡す |
| 範囲 | 万人向けなので、誰の業務にもぴったり合わない | 下書きまで、など境界を1行で切る |
| 人の決断 | 金額や送信まで、それらしい文で埋まってしまう | 人が決める点を、先に列挙する |
| 置き場 | 画面に答えが残り、各自のコピペで消える | 保存先を指定し、翌日同じ机で続く |
| 更新 | 配った瞬間から古くなる | ズレた点だけ、型に1行足す |
| 検収 | 上手いか下手かでしか見ない | 所定の場所・禁止・推測の明示で合否を見る |
私自身、顧問業を始めた頃は「良い指示文の型を渡せば動き出すはず」と考えていました。動かなかったのは、型の美しさ不足ではありません。読むものが無く、置いてよい場所が無く、人が握る点が書いていなかった。いま私は、伝え方より先にコンテキストを置きます。順番が逆だと、どんな名文でも一般論に戻ります。配った資料が開かれなくなるのは、現場が怠惰だからではなく、その一文では自分の今日の仕事が始まらないからです。
検索されている言葉は「何を打てばいいか」です。打ちたい気持ちは正しい。ずれは、打てば仕事が終わると思っているところにあります。人が新人に仕事を渡すとき、美しい話し方マニュアルは渡しません。材料の場所、ここまでやってよい範囲、最後は自分が見る点を渡します。AIへの依頼も、同じ順番です。上手い一文は、その3点が揃ったあとの上積みです。
この記事でも、あの検索語——「何を打てばいいか」——には答えます。ただし答えは100個の魔法の一文ではありません。仕事の渡し方12型です。言葉の「プロンプト」は、この対比のためにだけ使います。本体は依頼文です。
仕事の渡し方は、3点で決まる

12型に入る前に、共通の骨を置きます。書籍付録の依頼テンプレは、毎回これを埋めるための枠です。
渡す材料 × 任せる範囲 × 人が決めること
どれか1つ欠けると、相談に戻るか、事故側に倒れる。
ChatGPTを画面で使う場合も、この3点は同じです。入力は「ファイル添付か貼り付け」、保存先は「返ってきた答えを自分で所定フォルダへ保存する」に読み替えてください。どこに置くかを先に決めてから渡す。そこは画面でもフォルダでも変わりません。
# 今回の依頼
目的:
対象(誰が・いつ・どこで使うか):
入力(材料の場所):
欲しい成果物(形式・分量):
保存先: output/
制約・禁止:
参考にするナレッジ:
## 冒頭に貼る指示
まず就業規則・社員定義・knowledge を読んでから作業を始めてください。
推測で断定しないでください。不明点は質問してください。
成果物は指定の保存先に置き、最後に「人間が確認すべき点」を5つ書いてください。
この記事で「机」と呼ぶのは、AIが毎回読むフォルダ一式(材料・templates・output)のことです。机がまだ無い会社は、この枠の「入力」と「保存先」を、今あるフォルダ名に読み替えてください。机の作り方そのものはAI社員の作り方が正本です。どの仕事を最初に渡すかは業務棚卸しで決めます。この記事は、決まった1件を、どんな文で渡すかの型です。
出来上がりの見方は、上手さではありません。付録の受け入れテストを、そのまま使います。
- 成果物が所定の場所にある
- 禁止事項を破っていない
- 推測部分が推測と明記されている
- 人間が確認すべき点が具体的
- ゼロから作り直すより、直して出せる
5つが揃えば採用。揃わなければ、指示文を磨くより先に、社員定義(=AIに毎回読ませる自社ルールのファイル)のどこが空かを直します。12型目の「検収」は、このテストそのものです。
仕事の渡し方12型・全体表
12個を覚えなくていい。自社で今週発生する仕事に、いちばん近い1行を選んでください。
| 型 | 渡すもの | 任せる範囲 | 人が決めること |
|---|---|---|---|
| 1. 議事録 | 文字起こし・出席者・良いサンプル | 決定・宿題・担当・期限の抽出 | 何が決定で、何が雑談か |
| 2. 提案書下書き | 勝った提案3〜5本・相手メモ | 構成と本文の下書き | 金額・約束・送付 |
| 3. 報告書 | 現場メモ・様式・過去報告 | 様式どおりの下書き | 事実確認と提出 |
| 4. 見積下書き | 過去見積・原価目安・値引き基準 | 下書きと迷い点の一覧 | 金額・納期・保証 |
| 5. メール | 経緯・口調の実例・目的 | 返信・依頼の下書き | 送信、謝罪、確約 |
| 6. FAQ | 過去問い合わせ・公式回答・禁止表現 | 分類した草案 | 公式見解と約束しないこと |
| 7. マニュアル | 手順の断片・誰が使うか | 手順書の下書き | これが正式手順かどうか |
| 8. 日報 | 当日の作業ログ・様式 | 1行〜表形式への整形 | 上げる話、隠す話 |
| 9. 棚卸しインタビュー | 質問票・録音起こし・役割 | 業務一覧の抽出 | どれをAIに渡すか |
| 10. 社内ルール | 既存ルール・事故・やってはいけないこと | ルール案の下書き | 何を公式にするか |
| 11. 二次展開 | 元ネタ1本・媒体別の過去文 | 媒体ごとの下書き | 公開、主張、出す日 |
| 12. 検収 | 元の依頼・成果物・合格条件 | ズレの指摘と直し案 | 採用か差し戻しか |
共通点ははっきりしています。判断はプロ、作業はAI。12型のどれも、送信・公開・金額の確定は人の列に残しています。ここを空けると、便利な一文が事故の一文に変わります。
1. 議事録——会議を、次の仕事の材料にする
最初の1型に、いちばん選ばれます。材料がすでにあり、効果が見え、ほぼすべての会社にある。詳細な変換の設計は議事録活用の記事に譲り、ここでは渡し方だけ置きます。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | 文字起こし、出席者と役割、自社の「良い議事録」1本、前回の宿題一覧 |
| 任せる範囲 | 決定事項、宿題(担当・期限)、保留、次回までの確認点を表にする |
| 人が決めること | 本当に決まったことか、担当の割り振り、社外に出してよいか |
目的: 本日の会議から、決定・宿題・担当・期限を一覧にする
入力: input/本日の文字起こし。参考に templates/良い議事録.md
欲しい成果物: output/YYYY-MM-DD_議事録.md(決定/宿題/保留)
制約: 発言を美化しない。決まっていないことを決定にしない。送信しない
最後に、人間が確認すべき点を5つ。
よくあるズレは、雑談を決定に格上げすることです。直すときは依頼文を長くせず、「決定は、担当と期限が言えた行だけ」と1行足します。文字起こしが雑でも、良いサンプルが1本あれば形は寄ります。サンプルが無いと、きれいな議事録の一般形になり、その会社の会議では使えません。
2. 提案書下書き——勝った型を下敷きにする
白紙に「いい提案を」は、相談です。勝った提案書が3本あれば、仕事になります。下敷きの作り方は提案書の記事が本丸です。渡し方はこう切ります。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | 採用された提案3〜5本、会社紹介、相手の課題メモ、今回の条件 |
| 任せる範囲 | 構成、課題の整理、提案本文の下書き。価格表は既存数字の転記まで |
| 人が決めること | 金額、値引き、納期の確約、送付の可否、約束の言い切り |
目的: 今回の相手向け提案書の下書きを、過去の勝ちパターンで作る
入力: templates/勝った提案/ と input/相手メモ.md。料金は現行表以外使わない
欲しい成果物: output/提案下書き.md。金額と契約条件は変更しない
制約: 未確認の実績を断定しない。送付しない
最後に、人間が確認すべき点を5つ。特に約束表現を列挙する。
薄い提案になるときは、指示が弱いのではありません。下敷きが薄い。相手メモが「元気な会社」しか無い状態で、名文を足しても中身は増えません。勝った提案の「勝ち」は、文章の上手さより、何を約束し、何を約束しなかったかの型です。その型がフォルダに無い依頼は、相談に戻ります。
3. 報告書——現場のメモを、様式に乗せる
現場が時間を溶かすのは、作業そのものより、作業を報告書にすることです。顧問先の防災設備の現場でも、線は同じでした。判断はプロ、清書と転記はAI。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | 手書きメモや写真の説明、会社の様式、過去の良い報告書 |
| 任せる範囲 | 様式どおりの下書き、抜け項目の指摘、前回との差分の候補 |
| 人が決めること | 事実の最終確認、数値、提出、顧客に見せる表現 |
目的: 本日の現場メモを、指定様式の報告書下書きにする
入力: input/現場メモ.md と templates/報告書様式.md。数値はメモにあるものだけ
欲しい成果物: output/報告書下書き.md。空欄は空欄のまま残す
制約: 見えない点検結果を埋めない。提出・送信しない
人間が確認すべき点を、様式の項目順で出す。
空欄を賢く埋めさせると、いちばん危ない。無いものは無い、と書かせるのがこの型の肝です。現場メモが短いほど、AIは「それらしい点検結果」を補いたがります。補完を褒めない。空欄の指摘を褒める。報告書型の合格は、埋まっている量ではなく、事実の境界が残っていることです。
4. 見積下書き——金額は書かせても、確定させない
製造業・建設業で効く型です。書籍の記入例も、見積もり担当は「金額の確定はしない」から始まります。下書きと、迷った点の一覧が成果物です。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | 過去見積、原価の目安、値引き上限、受けない案件の条件、今回の引き合い |
| 任せる範囲 | 類似案件の照合、下書き作成、迷い点の列挙。安い方へ倒さない |
| 人が決めること | 単価の採用、値引き、納期、保証、先方への提示 |
目的: 今回の引き合いに対する見積もりの下書きと、判断に迷った点の一覧
入力: knowledge/過去見積/ と knowledge/値引き基準.md、input/引き合い.md
欲しい成果物: output/YYYY-MM-DD_見積下書き.md
制約: 金額・納期を確約しない。値引き上限を超えない。送信しない
迷ったら安い方に倒さず、類似案件を根拠として添える。
この型で人が決める列を空けると、AIは「通したい見積」を書き始めます。通すのは営業判断です。作業は照合と下書きまで。過去見積に古い単価が混ざっていると、堂々とその単価で下書きします。材料の鮮度は、依頼文の修辞より効きます。受けない案件の条件が1行でもあると、迷い点の一覧の質が一段上がります。
5. メール——短文ほど、出口が大事
短いほど事故ります。謝罪、納期、値引き、次の約束。チャットの相談で「丁寧な文」を貰ってそのまま送るのが、いちばん多い出口の開きすぎです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | 経緯の要点、相手との過去文、自社の口調、今回の目的と禁句 |
| 任せる範囲 | 件名と本文の下書きを2案。確約表現は仮置きと明記 |
| 人が決めること | 送る、送らない、謝る深さ、次の約束、金額・日付の言い切り |
目的: 先方への返信下書きを2案(標準/短文)
入力: input/経緯.md。口調は templates/過去の返信から外さない
欲しい成果物: output/返信下書き.md。確約しそうな文には印を付ける
制約: 送信しない。新しい納期・金額を作らない。謝罪の深さを決めない
人間が確認すべき点は、約束と日付の行だけでも可。
丁寧さの指定は、あとで足せば足ります。先に切るのは、新しい日付を作らせないことです。短い文ほど、無い納期が自然に入ります。2案出させるのは、文章を競わせるためではなく、人が選ぶ余地を残すためです。
6. FAQ——過去の問い合わせを、公式の手前まで
問い合わせ履歴は宝です。ただし、現場の口癖を公式にする権限はAIにありません。草案までが仕事、公式見解が人です。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | 過去の問い合わせと回答、商品仕様、使ってはいけない表現、未決定事項 |
| 任せる範囲 | 質問の束ね、草案、不足情報のリスト。公開用の断定はしない |
| 人が決めること | 公式にするか、補償や返金に触れるか、サイトへ載せるか |
目的: 直近の問い合わせからFAQ草案を作る
入力: input/問い合わせ履歴。公式として確定していることだけ knowledge/仕様.md
欲しい成果物: output/FAQ草案.md(質問/草案回答/未確定)
制約: 未確定を断定しない。補償・返金・納期を新たに約束しない
未確定は「未確定」列に分けて残す。
現場の口癖を公式にしない、がこの型の全部です。過去の回答に「次回は値引きします」が混ざっていても、それをFAQに昇格させてよいかは人の仕事です。未確定列が厚い草案は、失敗ではありません。公式にする前の在庫が見えたということです。
7. マニュアル——断片を手順にする。正式化はしない
ベテランの頭の中を、一度手順に落とす型です。完成した瞬間に「これが正式」と扱うと危険なので、成果物名は必ず下書きです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | 画面メモ、口頭説明の起こし、既存SOPの断片、想定読者(新人/パート) |
| 任せる範囲 | 手順の並べ替え、チェックリスト化、抜けの指摘 |
| 人が決めること | これが正式手順か、例外を認めるか、現場へ配るか |
目的: 新人向け手順書の下書きを作る
入力: input/口頭説明.md と 既存の断片。読者は入社1ヶ月の担当
欲しい成果物: output/手順下書き.md(手順/注意/不明点)
制約: 見ていない操作を補完しない。正式手順だと書かない
不明点は手順の中に混ぜず、末尾に集める。
「見ていない操作を補完しない」は、報告書型と同じです。賢い補完は、現場では嘘になります。読者を「新人」と書いておくと、専門語のまま進みにくくなります。それでも正式化は人がやります。配った瞬間に現場が止まり、例外処理が裏ルートになるのが、早すぎる正式化です。
8. 日報——ログを、翌日の材料にする
私の会社では、日報は感想文ではありません。1案件1行で、うまくいった点、ズレ、定義に追記することを残します。AIに書かせる対象も、そこです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | その日の作業ログ、様式、前日までの日報、書いてはいけない情報の定義 |
| 任せる範囲 | 様式への整形、ズレの候補抽出、翌日に残す1行の下書き |
| 人が決めること | 上位に上げる話、書かない話、顧客名の出し方 |
目的: 本日の作業ログを、所定の日報1行(または表)にする
入力: 05_ログ/本日分。様式は templates/日報.md
欲しい成果物: 日報表への追記案。秘密情報・個人情報・パスワードは書かない
制約: 推測の成果を実績にしない。社外秘の固有名詞は役割名に戻す
定義に追記すべきズレがあれば、別行で提案する。
感想の日報は、翌日の材料になりません。残すのは、何をやって、どこがズレて、定義のどこを足すかです。顧客実名や人事の機微は、入口の時点で役割名に戻します。日報が秘密の置き場になると、机そのものが危なくなります。
記入済みの実例:私の会社の日報
空欄のテンプレだけでは渡しにくいので、私が実際に使っている1組を置きます。私は日中の作業を、日次ログに時刻付きの1行で記録しています。終業時にAIへ渡す依頼文が、これです。
目的: 本日の日次ログから、所定の型で日報を作る
入力: 日次ログ/本日分(時刻付き1行の作業記録)。様式は templates/日報.md
欲しい成果物: 日報1本。見出しは 作業一覧/課題/次の一手 の3つ
制約: ログに無い作業を実績にしない。顧客名は役割名に戻す。送信しない
最後に、人間が確認すべき点を挙げる。
返ってくる日報の冒頭は、この構造です。
## 作業一覧
(ログの時刻順に、1件1行)
## 課題
(詰まった点と、定義に足す候補)
## 次の一手
(翌日の最初の1件)
検収で差し戻したのは、ほぼ2種類でした。ログに書いていない作業が実績側に紛れたとき。顧客名が役割名に戻っていないとき。差し戻すたびに制約へ1行足した結果、いまは「業務終了」の一言で、同じ構造の日報が返ってきます。依頼文が短くなるとは、こういうことです。
9. 棚卸しインタビュー——聞く仕事を、渡す仕事の在庫にする
「AIに任せたい仕事が言えない」会社の、手前の型です。インタビューそのものをAIがする必要はありません。起こしから業務名と材料の場所を抜くのが仕事です。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | 質問票、録音の文字起こし、その人の役割、既存の業務一覧があればそれ |
| 任せる範囲 | 繰り返す仕事の抽出、材料ファイルの有無、詰まりどころの整理 |
| 人が決めること | どれをAIに渡すか、どれは人が持つか、次に聞く人 |
目的: インタビュー起こしから、繰り返す仕事と材料の場所を抜く
入力: input/起こし.md。観点は 頻度/手順を言葉にできるか/ファイルの有無
欲しい成果物: output/業務候補一覧.md。判定(渡す/分解/人が持つ)は仮でよい
制約: 個人の評価を書かない。顧客の個人情報を抜かない
人が決める列は空欄のまま残し、候補だけ埋める。
判定までAIに確定させると、棚卸しが推薦会議になります。判定は経営の仕事です。手順の全体は棚卸しの記事にあります。
10. 社内ルール——使ってから書く。AIが毎回読む形で
「AIを入れる前に規程を」で止まる会社は、真面目な会社です。順番を逆にします。小さく使いながら、AIが毎回読むファイルとして育てる。全文ひな形は社内ルールの記事に置いてあります。渡し方は、事故と禁止から入ることです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | いま現場で守っていること、起きかけた事故、見せてよい情報の3層、既存規程の該当箇所 |
| 任せる範囲 | 1枚ガイド案、AIが読むルール案、抜けの指摘 |
| 人が決めること | 何を公式にするか、罰則にするか、全社へ出すか |
目的: いまの運用から、人間向け1枚とAIが読むルールの下書きを作る
入力: input/いま守っていること.md。禁止は入口(何を読ませるか)と出口(送信・公開)
欲しい成果物: output/ルール下書き.md。推測の禁止事項は「仮説」と付ける
制約: 使っていない業務の禁止を増やさない。公式規程だと名乗らない
人が確認する点は、現場が守れない行の候補。
事故と禁止から書かせるのは、ルールを現実より先に走らせないためです。使っていない業務の禁止を先に増やすと、誰も守れない規程が1枚増えるだけで、現場は裏ルートで回り始めます。起きかけた事故と、いま実際に守っていること。守れるルールの材料は、この2つだけです。
11. 二次展開——1つの素材を、媒体に分けて置く
広報・マーケで時間が溶けるのは、同じ話を媒体ごとに書き直す作業です。元ネタは1つ。過去のトーンが材料。公開は人。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | 元ネタ(セミナー、取材、記事)、媒体別の過去文、禁句、出せない数字 |
| 任せる範囲 | 各媒体の下書き、共通で使う事実の抜き出し、トーンの揃え |
| 人が決めること | 公開、主張の強さ、出す日、顧客名の扱い |
目的: 本日の元ネタから、社内向け要約/短い投稿文/メール案内の下書きを作る
入力: input/元ネタ.md と templates/過去投稿。数字は元ネタにあるものだけ
欲しい成果物: output/二次展開.md。媒体ごとに見出しを分ける
制約: 公開しない。元ネタに無い実績を足さない。顧客実名は役割名に戻す
人間が確認すべき点は、主張と数字の行。
媒体を増やすほど、元ネタに無い数字が入ります。禁止は「誇張するな」より、「元ネタに無い実績を足すな」のほうが効きます。出す日と出す場所は、人が持ちます。下書きが揃うことと、公開してよいことは、別の仕事です。
12. 検収——「上手い」ではなく、雇う/雇わない
12型の最後は、新しい仕事ではありません。1〜11の成果物を、人が見る前の下準備です。上手いかどうかで見ると、また指示文集めに戻ります。見るのは、所定の場所、禁止、推測の明示、直しで出せるかです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 渡す材料 | 元の依頼文、出てきた成果物、受け入れ条件5つ、前回直した点 |
| 任せる範囲 | 条件との突合、破っている行の指摘、差し戻し時に直す定義の候補 |
| 人が決めること | 採用か差し戻しか、定義のどこを直すか、次の1件に進むか |
目的: 今回の成果物を、受け入れ条件で検収する
入力: 元の依頼、output/成果物、次の5条件
- 所定の場所にある
- 禁止を破っていない
- 推測が推測と書いてある
- 人間が確認すべき点が具体的
- ゼロからより、直して出せる
欲しい成果物: output/検収メモ.md(合格/不合格の行、直し先)
制約: 合否そのものは仮判定。採用の決定は人が書く
定義の空欄候補があれば、社員定義の項目名で返す。
差し戻しの行き先は、依頼文の修辞ではありません。材料が無い、範囲が広い、人が決める点が空、のどれかです。直しの定着先——流す、覚える、ルールに書く、手順にする——は、作り方の記事側の運用です。ここでは「検収してから次の型に進む」ことだけ決めてください。
部門別に、最初の1型を置く
全体表を前に迷う会社には、部門の定番を渡しています。私が導入の初日に選んできた顔ぶれです。お手本がすでに社内にある仕事から入る、が外さない基準です。
| 部門 | 最初に置きやすい型 | よくある材料 | 人が残す点 |
|---|---|---|---|
| 経営・企画 | 議事録、棚卸しインタビュー | 会議の起こし、週次の決定 | 何を決定とみなすか |
| 営業 | 提案書下書き、見積下書き | 勝った提案、過去見積 | 金額と約束 |
| 現場・技術 | 報告書、マニュアル | 現場メモ、様式 | 事実と正式手順 |
| 総務・経理 | メール、FAQ、日報 | 定型案内、問い合わせ | 送信と公式見解 |
| 広報・マーケ | 二次展開、検収 | 元ネタ1本、過去投稿 | 公開と数字 |
| 推進役 | 社内ルール、検収 | いま守っていること | 何を公式にするか |
私の会社で日報や原稿が1行で呼べるのは、一度渡した仕事が手順として机に残っているからです。
最初の1型の選び方
12個を横並びで始めると、どれも中途半端になります。指示文集を配った会社が止まるのと、同じ失敗を、型の数で繰り返すだけです。選ぶ基準は3つです。
- 今週、材料がファイルとしてある
- 成果物の置き場と、人が決める点が言える
- 直して出せるかどうか、その日のうちに判定できる
迷ったら1の議事録です。提案書も見積も、材料の3本が揃ってからでいい。メールは短いので軽く見えますが、出口が開いているので2型目以降が安全です。社内ルールは、1型を回したあとのほうが中身が具体になります。
1型が受け入れテストを通ったら、依頼文は短くして構いません。材料の場所と禁止と確認点が、フォルダ側に移るからです。毎回12型分の長文を打つことが、成功ではありません。成功は、同じ仕事が翌週、より短い依頼で同じ品質になることです。短くして崩れたら、文才が足りないのではありません。机に残すルールが1行足りない。足りない行を、依頼文ではなく机側へ足します。
2型目は、1型が短い依頼で回ってからです。提案書の次に見積、議事録の次に二次展開、と欲張ると、どちらの机も中途半端になります。人が決める点が似ている型——提案と見積、報告書とマニュアル——は、あとから並べやすい。出口が開いているメールとFAQは、入口の設計が一度通ってからのほうが安全です。
やってはいけない、渡し方
| やりがち | 何が起きるか | 代わりにやること |
|---|---|---|
| 「いい感じに」 | 相談に戻る | 目的と保存先を1行ずつ |
| 材料なしで名文だけ | 上手な一般論 | 読むファイルを先に置く |
| 12型を一度に配る | 1ヶ月で開かれなくなる | 1型を検収する |
| 空欄を埋めさせる | 嘘の事実が様式に乗る | 無いものは空欄のまま |
| 送信まで任せる | 出口が開く | 下書きまで。送信は人 |
| 不合格を指示文のせいだけにする | また一文集めに戻る | 材料・範囲・人の決断のどれが空かを見る |
契約して触らなくなる会社も、配って開かれなくなる社内資料も、根は同じです。仕事が渡っていない。型を増やす前に、1件が机の上に残るかを見てください。
よくある質問
Q1. 指示文の上手さを、まったく勉強しなくていいですか?
後回しで構いません。3点が揃った依頼は、素朴な日本語で動きます。修辞が効くのは、机と材料ができたあとの上積みです。先に修辞へ行くと、冒頭の100選と同じ道をたどります。
Q2. ChatGPTの画面に、この依頼文を貼るだけでいいですか?
相談として使うなら、材料を持参したうえで貼れます。仕事として残すなら、読む場所と保存先がある使い方——フォルダを職場にする側——へ渡したほうが、翌日につながります。画面が同じでも、置き場が無い依頼は相談です。
Q3. 12型以外の仕事は、どう渡せばいいですか?
同じ3点で切ってください。渡す材料、任せる範囲、人が決めること。型名は後から付けていい。先に3点が言えない仕事は、まだ渡す番ではありません。
Q4. 英語の長い指示文を翻訳して使ってはダメですか?
材料と禁止を自社に差し替えるなら、骨だけ借りて構いません。そのまま貼ると、存在しない部署名と、自社に無いデータと、送れない「Send this email」が混ざります。翻訳より、3点の空欄埋めのほうが速い。
Q5. 個人情報を含むメールや議事録は?
机に置く前に落とすか、その仕事は人が持ちます。依頼文で「気をつけて」と書いても、入口に入ったものは読まれます。線の引き方はセキュリティの記事側、社内への一文はルールの記事側です。
Q6. 1型あたり、どれくらいで検収できますか?
材料が揃っている仕事なら、最初の1回はその日のうちです。通らなければ、依頼文を増やす前に材料を足す。私の顧問先でも、初日に通るのは様式がすでに存在する仕事——議事録、報告書、日報——です。
Q7. 社員に12型を配ってよいですか?
全体表と、自部門の1型だけ渡してください。12個の依頼文を一度に配ると、また開かれない資料になります。受け入れテストの5行は、全部署共通で配ってよい。
Q8. 料金やツールは、どの段階で決めますか?
1型が机の上に残ってからです。ツール実費の目安は1人あたり月3,000円〜1万円程度(ChatGPT Plus・Claude Proなど個人有料プラン〜法人プランの、2026年8月時点の目安)。先に契約して「何を打つか」を探し始めると、また100選に戻ります。
持ち帰り:今週使う1枚
コピーして埋めるのは、この順です。
- 12型から、今週材料がある1つを選んだ
- 渡す材料の場所を、ファイル名まで書いた
- 任せる範囲を「下書きまで」で切った
- 人が決めることを3つ書いた(金額・送信・公開のうち該当するものは必ず)
- 該当型の依頼文をコピーし、空欄だけ差し替えた
- 成果物を、受け入れテスト5つで見た
- 不合格なら、指示文ではなく材料・範囲・人の決断のどれを直すか書いた
- 合格したら、ズレ1行だけ型に足した
- 来週も同じ仕事なら、依頼文を短くして再現できるか試す
- 2型目は、1型が短い依頼で回ってから
全体表は保存用に切って使ってください。依頼文は、机の templates/ に置くと、配布資料より残ります。
まとめ:集めるな。渡せ。
検索されているのは「何を打てばいいか」です。現場で残るのは「何を渡すか」です。12型は、仕事の渡し方です。渡す材料、任せる範囲、人が決めること。この3点が揃えば、文章は短くていい。揃わなければ、100個あっても1ヶ月で開かれなくなります。
判断はプロ、作業はAI。入口と出口は人が握る。型は増やす前に、1件を机の上へ。作り方と棚卸しと社内ルールは、すでに別の正本があります。入力してよい情報の線はセキュリティと情報入力、伴走の役割はAI顧問とはにあります。この記事の仕事は、渡し方を12個、コピーできる状態で置くことです。
自社の1業務へ落とす資料は、下に置いてあります。
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