AIへの仕事の渡し方12型|プロンプト集の代わりに使う依頼文

仕事の渡し方12の型。材料・範囲・人が決める

誰かが気を利かせて「使える指示文100選」を社内に配る。最初の1週間はみんな試す。1ヶ月後、誰も開かなくなる——この光景を、顧問の相談でも、自分の初期の失敗でも、何度も見てきました。需要は本物です。世界中で「ChatGPTに何を打てばいいか」は、検索が死なない問いです。ずれているのは、答えの置き場所です。上手な一文を集めても、会社の材料と、任せる範囲と、人が決める点が無い。返ってくるのは、上手な一般論です。

プロンプト集の代わりに使うのは、仕事の渡し方です。渡す材料、任せる範囲、人が決めること。この3点が揃った依頼文なら、文章がぶっきらぼうでも実務に載ります。この記事は、書籍『ChatGPTを、「AI社員」に育てる方法』付録の依頼テンプレを、現場で繰り返す12の仕事に展開したものです。集めて飾る一覧ではありません。1型をコピーし、空欄を自社に差し替えて、今日渡すための型です。


赤堀亘
執筆・監修 AiWiLL株式会社 代表取締役 赤堀亘

日本テレビ・Bitget等でのB2Bマーケティング実務を経て、2023年にSHIFT AI創業へ参画。コミュニティ・スクール責任者として2年で3万人規模へのグロースを主導。2026年、静岡県熱海市でAiWiLL株式会社を創業。生成AI顧問「WiLLAGENT」として、防災設備・不動産管理・旅館・飲食など現場型の中小企業に入り、売り上げ向上に寄与するマーケティングや営業施策をどうAIで質を上げ、数を増やすかを一緒に考え抜き、人手不足のなか報告書・見積・マニュアルづくりといった実務をいかにAIで省くかといった、AIを使った事業づくりを伴走支援している。生成AI研修・Eラーニングの監修も担当。企画したイベント・ウェビナーは累計112件、参加者は1万人超。

AIエージェント・新規事業リサーチ・マーケティングの実践セミナー3本の本編と、WiLLAGENTのサービス説明PDFを、無料の資料セットとして公開しています。→ 無料資料セットを受け取る

目次

なぜ「使える指示文」の配布から始めると止まるのか

止まる理由は、使う人の怠慢ではありません。構造が3つ欠けています。

欠けているもの 配布された一文で起きること 仕事の渡し方だとどうなるか
材料 自社の商品も顧客も読まずに答える 読むファイルの場所を先に渡す
範囲 万人向けなので、誰の業務にもぴったり合わない 下書きまで、など境界を1行で切る
人の決断 金額や送信まで、それらしい文で埋まってしまう 人が決める点を、先に列挙する
置き場 画面に答えが残り、各自のコピペで消える 保存先を指定し、翌日同じ机で続く
更新 配った瞬間から古くなる ズレた点だけ、型に1行足す
検収 上手いか下手かでしか見ない 所定の場所・禁止・推測の明示で合否を見る

私自身、顧問業を始めた頃は「良い指示文の型を渡せば動き出すはず」と考えていました。動かなかったのは、型の美しさ不足ではありません。読むものが無く、置いてよい場所が無く、人が握る点が書いていなかった。いま私は、伝え方より先にコンテキストを置きます。順番が逆だと、どんな名文でも一般論に戻ります。配った資料が開かれなくなるのは、現場が怠惰だからではなく、その一文では自分の今日の仕事が始まらないからです。

検索されている言葉は「何を打てばいいか」です。打ちたい気持ちは正しい。ずれは、打てば仕事が終わると思っているところにあります。人が新人に仕事を渡すとき、美しい話し方マニュアルは渡しません。材料の場所、ここまでやってよい範囲、最後は自分が見る点を渡します。AIへの依頼も、同じ順番です。上手い一文は、その3点が揃ったあとの上積みです。

この記事でも、あの検索語——「何を打てばいいか」——には答えます。ただし答えは100個の魔法の一文ではありません。仕事の渡し方12型です。言葉の「プロンプト」は、この対比のためにだけ使います。本体は依頼文です。

仕事の渡し方は、3点で決まる

渡す材料、任せる範囲、人が決めるの3点
仕事の渡し方は、この3点で決まる。材料・範囲・人が決めること

12型に入る前に、共通の骨を置きます。書籍付録の依頼テンプレは、毎回これを埋めるための枠です。

渡す材料 × 任せる範囲 × 人が決めること

どれか1つ欠けると、相談に戻るか、事故側に倒れる。

ChatGPTを画面で使う場合も、この3点は同じです。入力は「ファイル添付か貼り付け」、保存先は「返ってきた答えを自分で所定フォルダへ保存する」に読み替えてください。どこに置くかを先に決めてから渡す。そこは画面でもフォルダでも変わりません。

# 今回の依頼
目的:
対象(誰が・いつ・どこで使うか):
入力(材料の場所):
欲しい成果物(形式・分量):
保存先: output/
制約・禁止:
参考にするナレッジ:

## 冒頭に貼る指示
まず就業規則・社員定義・knowledge を読んでから作業を始めてください。
推測で断定しないでください。不明点は質問してください。
成果物は指定の保存先に置き、最後に「人間が確認すべき点」を5つ書いてください。

この記事で「机」と呼ぶのは、AIが毎回読むフォルダ一式(材料・templates・output)のことです。机がまだ無い会社は、この枠の「入力」と「保存先」を、今あるフォルダ名に読み替えてください。机の作り方そのものはAI社員の作り方が正本です。どの仕事を最初に渡すかは業務棚卸しで決めます。この記事は、決まった1件を、どんな文で渡すかの型です。

出来上がりの見方は、上手さではありません。付録の受け入れテストを、そのまま使います。

  • 成果物が所定の場所にある
  • 禁止事項を破っていない
  • 推測部分が推測と明記されている
  • 人間が確認すべき点が具体的
  • ゼロから作り直すより、直して出せる

5つが揃えば採用。揃わなければ、指示文を磨くより先に、社員定義(=AIに毎回読ませる自社ルールのファイル)のどこが空かを直します。12型目の「検収」は、このテストそのものです。

仕事の渡し方12型・全体表

12個を覚えなくていい。自社で今週発生する仕事に、いちばん近い1行を選んでください。

渡すもの 任せる範囲 人が決めること
1. 議事録 文字起こし・出席者・良いサンプル 決定・宿題・担当・期限の抽出 何が決定で、何が雑談か
2. 提案書下書き 勝った提案3〜5本・相手メモ 構成と本文の下書き 金額・約束・送付
3. 報告書 現場メモ・様式・過去報告 様式どおりの下書き 事実確認と提出
4. 見積下書き 過去見積・原価目安・値引き基準 下書きと迷い点の一覧 金額・納期・保証
5. メール 経緯・口調の実例・目的 返信・依頼の下書き 送信、謝罪、確約
6. FAQ 過去問い合わせ・公式回答・禁止表現 分類した草案 公式見解と約束しないこと
7. マニュアル 手順の断片・誰が使うか 手順書の下書き これが正式手順かどうか
8. 日報 当日の作業ログ・様式 1行〜表形式への整形 上げる話、隠す話
9. 棚卸しインタビュー 質問票・録音起こし・役割 業務一覧の抽出 どれをAIに渡すか
10. 社内ルール 既存ルール・事故・やってはいけないこと ルール案の下書き 何を公式にするか
11. 二次展開 元ネタ1本・媒体別の過去文 媒体ごとの下書き 公開、主張、出す日
12. 検収 元の依頼・成果物・合格条件 ズレの指摘と直し案 採用か差し戻しか

共通点ははっきりしています。判断はプロ、作業はAI。12型のどれも、送信・公開・金額の確定は人の列に残しています。ここを空けると、便利な一文が事故の一文に変わります。

1. 議事録——会議を、次の仕事の材料にする

最初の1型に、いちばん選ばれます。材料がすでにあり、効果が見え、ほぼすべての会社にある。詳細な変換の設計は議事録活用の記事に譲り、ここでは渡し方だけ置きます。

項目 中身
渡す材料 文字起こし、出席者と役割、自社の「良い議事録」1本、前回の宿題一覧
任せる範囲 決定事項、宿題(担当・期限)、保留、次回までの確認点を表にする
人が決めること 本当に決まったことか、担当の割り振り、社外に出してよいか
目的: 本日の会議から、決定・宿題・担当・期限を一覧にする
入力: input/本日の文字起こし。参考に templates/良い議事録.md
欲しい成果物: output/YYYY-MM-DD_議事録.md(決定/宿題/保留)
制約: 発言を美化しない。決まっていないことを決定にしない。送信しない
最後に、人間が確認すべき点を5つ。

よくあるズレは、雑談を決定に格上げすることです。直すときは依頼文を長くせず、「決定は、担当と期限が言えた行だけ」と1行足します。文字起こしが雑でも、良いサンプルが1本あれば形は寄ります。サンプルが無いと、きれいな議事録の一般形になり、その会社の会議では使えません。

2. 提案書下書き——勝った型を下敷きにする

白紙に「いい提案を」は、相談です。勝った提案書が3本あれば、仕事になります。下敷きの作り方は提案書の記事が本丸です。渡し方はこう切ります。

項目 中身
渡す材料 採用された提案3〜5本、会社紹介、相手の課題メモ、今回の条件
任せる範囲 構成、課題の整理、提案本文の下書き。価格表は既存数字の転記まで
人が決めること 金額、値引き、納期の確約、送付の可否、約束の言い切り
目的: 今回の相手向け提案書の下書きを、過去の勝ちパターンで作る
入力: templates/勝った提案/ と input/相手メモ.md。料金は現行表以外使わない
欲しい成果物: output/提案下書き.md。金額と契約条件は変更しない
制約: 未確認の実績を断定しない。送付しない
最後に、人間が確認すべき点を5つ。特に約束表現を列挙する。

薄い提案になるときは、指示が弱いのではありません。下敷きが薄い。相手メモが「元気な会社」しか無い状態で、名文を足しても中身は増えません。勝った提案の「勝ち」は、文章の上手さより、何を約束し、何を約束しなかったかの型です。その型がフォルダに無い依頼は、相談に戻ります。

3. 報告書——現場のメモを、様式に乗せる

現場が時間を溶かすのは、作業そのものより、作業を報告書にすることです。顧問先の防災設備の現場でも、線は同じでした。判断はプロ、清書と転記はAI。

項目 中身
渡す材料 手書きメモや写真の説明、会社の様式、過去の良い報告書
任せる範囲 様式どおりの下書き、抜け項目の指摘、前回との差分の候補
人が決めること 事実の最終確認、数値、提出、顧客に見せる表現
目的: 本日の現場メモを、指定様式の報告書下書きにする
入力: input/現場メモ.md と templates/報告書様式.md。数値はメモにあるものだけ
欲しい成果物: output/報告書下書き.md。空欄は空欄のまま残す
制約: 見えない点検結果を埋めない。提出・送信しない
人間が確認すべき点を、様式の項目順で出す。

空欄を賢く埋めさせると、いちばん危ない。無いものは無い、と書かせるのがこの型の肝です。現場メモが短いほど、AIは「それらしい点検結果」を補いたがります。補完を褒めない。空欄の指摘を褒める。報告書型の合格は、埋まっている量ではなく、事実の境界が残っていることです。

4. 見積下書き——金額は書かせても、確定させない

製造業・建設業で効く型です。書籍の記入例も、見積もり担当は「金額の確定はしない」から始まります。下書きと、迷った点の一覧が成果物です。

項目 中身
渡す材料 過去見積、原価の目安、値引き上限、受けない案件の条件、今回の引き合い
任せる範囲 類似案件の照合、下書き作成、迷い点の列挙。安い方へ倒さない
人が決めること 単価の採用、値引き、納期、保証、先方への提示
目的: 今回の引き合いに対する見積もりの下書きと、判断に迷った点の一覧
入力: knowledge/過去見積/ と knowledge/値引き基準.md、input/引き合い.md
欲しい成果物: output/YYYY-MM-DD_見積下書き.md
制約: 金額・納期を確約しない。値引き上限を超えない。送信しない
迷ったら安い方に倒さず、類似案件を根拠として添える。

この型で人が決める列を空けると、AIは「通したい見積」を書き始めます。通すのは営業判断です。作業は照合と下書きまで。過去見積に古い単価が混ざっていると、堂々とその単価で下書きします。材料の鮮度は、依頼文の修辞より効きます。受けない案件の条件が1行でもあると、迷い点の一覧の質が一段上がります。

5. メール——短文ほど、出口が大事

短いほど事故ります。謝罪、納期、値引き、次の約束。チャットの相談で「丁寧な文」を貰ってそのまま送るのが、いちばん多い出口の開きすぎです。

項目 中身
渡す材料 経緯の要点、相手との過去文、自社の口調、今回の目的と禁句
任せる範囲 件名と本文の下書きを2案。確約表現は仮置きと明記
人が決めること 送る、送らない、謝る深さ、次の約束、金額・日付の言い切り
目的: 先方への返信下書きを2案(標準/短文)
入力: input/経緯.md。口調は templates/過去の返信から外さない
欲しい成果物: output/返信下書き.md。確約しそうな文には印を付ける
制約: 送信しない。新しい納期・金額を作らない。謝罪の深さを決めない
人間が確認すべき点は、約束と日付の行だけでも可。

丁寧さの指定は、あとで足せば足ります。先に切るのは、新しい日付を作らせないことです。短い文ほど、無い納期が自然に入ります。2案出させるのは、文章を競わせるためではなく、人が選ぶ余地を残すためです。

6. FAQ——過去の問い合わせを、公式の手前まで

問い合わせ履歴は宝です。ただし、現場の口癖を公式にする権限はAIにありません。草案までが仕事、公式見解が人です。

項目 中身
渡す材料 過去の問い合わせと回答、商品仕様、使ってはいけない表現、未決定事項
任せる範囲 質問の束ね、草案、不足情報のリスト。公開用の断定はしない
人が決めること 公式にするか、補償や返金に触れるか、サイトへ載せるか
目的: 直近の問い合わせからFAQ草案を作る
入力: input/問い合わせ履歴。公式として確定していることだけ knowledge/仕様.md
欲しい成果物: output/FAQ草案.md(質問/草案回答/未確定)
制約: 未確定を断定しない。補償・返金・納期を新たに約束しない
未確定は「未確定」列に分けて残す。

現場の口癖を公式にしない、がこの型の全部です。過去の回答に「次回は値引きします」が混ざっていても、それをFAQに昇格させてよいかは人の仕事です。未確定列が厚い草案は、失敗ではありません。公式にする前の在庫が見えたということです。

7. マニュアル——断片を手順にする。正式化はしない

ベテランの頭の中を、一度手順に落とす型です。完成した瞬間に「これが正式」と扱うと危険なので、成果物名は必ず下書きです。

項目 中身
渡す材料 画面メモ、口頭説明の起こし、既存SOPの断片、想定読者(新人/パート)
任せる範囲 手順の並べ替え、チェックリスト化、抜けの指摘
人が決めること これが正式手順か、例外を認めるか、現場へ配るか
目的: 新人向け手順書の下書きを作る
入力: input/口頭説明.md と 既存の断片。読者は入社1ヶ月の担当
欲しい成果物: output/手順下書き.md(手順/注意/不明点)
制約: 見ていない操作を補完しない。正式手順だと書かない
不明点は手順の中に混ぜず、末尾に集める。

「見ていない操作を補完しない」は、報告書型と同じです。賢い補完は、現場では嘘になります。読者を「新人」と書いておくと、専門語のまま進みにくくなります。それでも正式化は人がやります。配った瞬間に現場が止まり、例外処理が裏ルートになるのが、早すぎる正式化です。

8. 日報——ログを、翌日の材料にする

私の会社では、日報は感想文ではありません。1案件1行で、うまくいった点、ズレ、定義に追記することを残します。AIに書かせる対象も、そこです。

項目 中身
渡す材料 その日の作業ログ、様式、前日までの日報、書いてはいけない情報の定義
任せる範囲 様式への整形、ズレの候補抽出、翌日に残す1行の下書き
人が決めること 上位に上げる話、書かない話、顧客名の出し方
目的: 本日の作業ログを、所定の日報1行(または表)にする
入力: 05_ログ/本日分。様式は templates/日報.md
欲しい成果物: 日報表への追記案。秘密情報・個人情報・パスワードは書かない
制約: 推測の成果を実績にしない。社外秘の固有名詞は役割名に戻す
定義に追記すべきズレがあれば、別行で提案する。

感想の日報は、翌日の材料になりません。残すのは、何をやって、どこがズレて、定義のどこを足すかです。顧客実名や人事の機微は、入口の時点で役割名に戻します。日報が秘密の置き場になると、机そのものが危なくなります。

記入済みの実例:私の会社の日報

空欄のテンプレだけでは渡しにくいので、私が実際に使っている1組を置きます。私は日中の作業を、日次ログに時刻付きの1行で記録しています。終業時にAIへ渡す依頼文が、これです。

目的: 本日の日次ログから、所定の型で日報を作る
入力: 日次ログ/本日分(時刻付き1行の作業記録)。様式は templates/日報.md
欲しい成果物: 日報1本。見出しは 作業一覧/課題/次の一手 の3つ
制約: ログに無い作業を実績にしない。顧客名は役割名に戻す。送信しない
最後に、人間が確認すべき点を挙げる。

返ってくる日報の冒頭は、この構造です。

## 作業一覧
(ログの時刻順に、1件1行)
## 課題
(詰まった点と、定義に足す候補)
## 次の一手
(翌日の最初の1件)

検収で差し戻したのは、ほぼ2種類でした。ログに書いていない作業が実績側に紛れたとき。顧客名が役割名に戻っていないとき。差し戻すたびに制約へ1行足した結果、いまは「業務終了」の一言で、同じ構造の日報が返ってきます。依頼文が短くなるとは、こういうことです。

9. 棚卸しインタビュー——聞く仕事を、渡す仕事の在庫にする

「AIに任せたい仕事が言えない」会社の、手前の型です。インタビューそのものをAIがする必要はありません。起こしから業務名と材料の場所を抜くのが仕事です。

項目 中身
渡す材料 質問票、録音の文字起こし、その人の役割、既存の業務一覧があればそれ
任せる範囲 繰り返す仕事の抽出、材料ファイルの有無、詰まりどころの整理
人が決めること どれをAIに渡すか、どれは人が持つか、次に聞く人
目的: インタビュー起こしから、繰り返す仕事と材料の場所を抜く
入力: input/起こし.md。観点は 頻度/手順を言葉にできるか/ファイルの有無
欲しい成果物: output/業務候補一覧.md。判定(渡す/分解/人が持つ)は仮でよい
制約: 個人の評価を書かない。顧客の個人情報を抜かない
人が決める列は空欄のまま残し、候補だけ埋める。

判定までAIに確定させると、棚卸しが推薦会議になります。判定は経営の仕事です。手順の全体は棚卸しの記事にあります。

10. 社内ルール——使ってから書く。AIが毎回読む形で

「AIを入れる前に規程を」で止まる会社は、真面目な会社です。順番を逆にします。小さく使いながら、AIが毎回読むファイルとして育てる。全文ひな形は社内ルールの記事に置いてあります。渡し方は、事故と禁止から入ることです。

項目 中身
渡す材料 いま現場で守っていること、起きかけた事故、見せてよい情報の3層、既存規程の該当箇所
任せる範囲 1枚ガイド案、AIが読むルール案、抜けの指摘
人が決めること 何を公式にするか、罰則にするか、全社へ出すか
目的: いまの運用から、人間向け1枚とAIが読むルールの下書きを作る
入力: input/いま守っていること.md。禁止は入口(何を読ませるか)と出口(送信・公開)
欲しい成果物: output/ルール下書き.md。推測の禁止事項は「仮説」と付ける
制約: 使っていない業務の禁止を増やさない。公式規程だと名乗らない
人が確認する点は、現場が守れない行の候補。

事故と禁止から書かせるのは、ルールを現実より先に走らせないためです。使っていない業務の禁止を先に増やすと、誰も守れない規程が1枚増えるだけで、現場は裏ルートで回り始めます。起きかけた事故と、いま実際に守っていること。守れるルールの材料は、この2つだけです。

11. 二次展開——1つの素材を、媒体に分けて置く

広報・マーケで時間が溶けるのは、同じ話を媒体ごとに書き直す作業です。元ネタは1つ。過去のトーンが材料。公開は人。

項目 中身
渡す材料 元ネタ(セミナー、取材、記事)、媒体別の過去文、禁句、出せない数字
任せる範囲 各媒体の下書き、共通で使う事実の抜き出し、トーンの揃え
人が決めること 公開、主張の強さ、出す日、顧客名の扱い
目的: 本日の元ネタから、社内向け要約/短い投稿文/メール案内の下書きを作る
入力: input/元ネタ.md と templates/過去投稿。数字は元ネタにあるものだけ
欲しい成果物: output/二次展開.md。媒体ごとに見出しを分ける
制約: 公開しない。元ネタに無い実績を足さない。顧客実名は役割名に戻す
人間が確認すべき点は、主張と数字の行。

媒体を増やすほど、元ネタに無い数字が入ります。禁止は「誇張するな」より、「元ネタに無い実績を足すな」のほうが効きます。出す日と出す場所は、人が持ちます。下書きが揃うことと、公開してよいことは、別の仕事です。

12. 検収——「上手い」ではなく、雇う/雇わない

12型の最後は、新しい仕事ではありません。1〜11の成果物を、人が見る前の下準備です。上手いかどうかで見ると、また指示文集めに戻ります。見るのは、所定の場所、禁止、推測の明示、直しで出せるかです。

項目 中身
渡す材料 元の依頼文、出てきた成果物、受け入れ条件5つ、前回直した点
任せる範囲 条件との突合、破っている行の指摘、差し戻し時に直す定義の候補
人が決めること 採用か差し戻しか、定義のどこを直すか、次の1件に進むか
目的: 今回の成果物を、受け入れ条件で検収する
入力: 元の依頼、output/成果物、次の5条件
- 所定の場所にある
- 禁止を破っていない
- 推測が推測と書いてある
- 人間が確認すべき点が具体的
- ゼロからより、直して出せる
欲しい成果物: output/検収メモ.md(合格/不合格の行、直し先)
制約: 合否そのものは仮判定。採用の決定は人が書く
定義の空欄候補があれば、社員定義の項目名で返す。

差し戻しの行き先は、依頼文の修辞ではありません。材料が無い、範囲が広い、人が決める点が空、のどれかです。直しの定着先——流す、覚える、ルールに書く、手順にする——は、作り方の記事側の運用です。ここでは「検収してから次の型に進む」ことだけ決めてください。

部門別に、最初の1型を置く

全体表を前に迷う会社には、部門の定番を渡しています。私が導入の初日に選んできた顔ぶれです。お手本がすでに社内にある仕事から入る、が外さない基準です。

部門 最初に置きやすい型 よくある材料 人が残す点
経営・企画 議事録、棚卸しインタビュー 会議の起こし、週次の決定 何を決定とみなすか
営業 提案書下書き、見積下書き 勝った提案、過去見積 金額と約束
現場・技術 報告書、マニュアル 現場メモ、様式 事実と正式手順
総務・経理 メール、FAQ、日報 定型案内、問い合わせ 送信と公式見解
広報・マーケ 二次展開、検収 元ネタ1本、過去投稿 公開と数字
推進役 社内ルール、検収 いま守っていること 何を公式にするか

私の会社で日報や原稿が1行で呼べるのは、一度渡した仕事が手順として机に残っているからです。

最初の1型の選び方

12個を横並びで始めると、どれも中途半端になります。指示文集を配った会社が止まるのと、同じ失敗を、型の数で繰り返すだけです。選ぶ基準は3つです。

  1. 今週、材料がファイルとしてある
  2. 成果物の置き場と、人が決める点が言える
  3. 直して出せるかどうか、その日のうちに判定できる

迷ったら1の議事録です。提案書も見積も、材料の3本が揃ってからでいい。メールは短いので軽く見えますが、出口が開いているので2型目以降が安全です。社内ルールは、1型を回したあとのほうが中身が具体になります。

1型が受け入れテストを通ったら、依頼文は短くして構いません。材料の場所と禁止と確認点が、フォルダ側に移るからです。毎回12型分の長文を打つことが、成功ではありません。成功は、同じ仕事が翌週、より短い依頼で同じ品質になることです。短くして崩れたら、文才が足りないのではありません。机に残すルールが1行足りない。足りない行を、依頼文ではなく机側へ足します。

2型目は、1型が短い依頼で回ってからです。提案書の次に見積、議事録の次に二次展開、と欲張ると、どちらの机も中途半端になります。人が決める点が似ている型——提案と見積、報告書とマニュアル——は、あとから並べやすい。出口が開いているメールとFAQは、入口の設計が一度通ってからのほうが安全です。

やってはいけない、渡し方

やりがち 何が起きるか 代わりにやること
「いい感じに」 相談に戻る 目的と保存先を1行ずつ
材料なしで名文だけ 上手な一般論 読むファイルを先に置く
12型を一度に配る 1ヶ月で開かれなくなる 1型を検収する
空欄を埋めさせる 嘘の事実が様式に乗る 無いものは空欄のまま
送信まで任せる 出口が開く 下書きまで。送信は人
不合格を指示文のせいだけにする また一文集めに戻る 材料・範囲・人の決断のどれが空かを見る

契約して触らなくなる会社も、配って開かれなくなる社内資料も、根は同じです。仕事が渡っていない。型を増やす前に、1件が机の上に残るかを見てください。

よくある質問

Q1. 指示文の上手さを、まったく勉強しなくていいですか?

後回しで構いません。3点が揃った依頼は、素朴な日本語で動きます。修辞が効くのは、机と材料ができたあとの上積みです。先に修辞へ行くと、冒頭の100選と同じ道をたどります。

Q2. ChatGPTの画面に、この依頼文を貼るだけでいいですか?

相談として使うなら、材料を持参したうえで貼れます。仕事として残すなら、読む場所と保存先がある使い方——フォルダを職場にする側——へ渡したほうが、翌日につながります。画面が同じでも、置き場が無い依頼は相談です。

Q3. 12型以外の仕事は、どう渡せばいいですか?

同じ3点で切ってください。渡す材料、任せる範囲、人が決めること。型名は後から付けていい。先に3点が言えない仕事は、まだ渡す番ではありません。

Q4. 英語の長い指示文を翻訳して使ってはダメですか?

材料と禁止を自社に差し替えるなら、骨だけ借りて構いません。そのまま貼ると、存在しない部署名と、自社に無いデータと、送れない「Send this email」が混ざります。翻訳より、3点の空欄埋めのほうが速い。

Q5. 個人情報を含むメールや議事録は?

机に置く前に落とすか、その仕事は人が持ちます。依頼文で「気をつけて」と書いても、入口に入ったものは読まれます。線の引き方はセキュリティの記事側、社内への一文はルールの記事側です。

Q6. 1型あたり、どれくらいで検収できますか?

材料が揃っている仕事なら、最初の1回はその日のうちです。通らなければ、依頼文を増やす前に材料を足す。私の顧問先でも、初日に通るのは様式がすでに存在する仕事——議事録、報告書、日報——です。

Q7. 社員に12型を配ってよいですか?

全体表と、自部門の1型だけ渡してください。12個の依頼文を一度に配ると、また開かれない資料になります。受け入れテストの5行は、全部署共通で配ってよい。

Q8. 料金やツールは、どの段階で決めますか?

1型が机の上に残ってからです。ツール実費の目安は1人あたり月3,000円〜1万円程度(ChatGPT Plus・Claude Proなど個人有料プラン〜法人プランの、2026年8月時点の目安)。先に契約して「何を打つか」を探し始めると、また100選に戻ります。

持ち帰り:今週使う1枚

コピーして埋めるのは、この順です。

  1. 12型から、今週材料がある1つを選んだ
  2. 渡す材料の場所を、ファイル名まで書いた
  3. 任せる範囲を「下書きまで」で切った
  4. 人が決めることを3つ書いた(金額・送信・公開のうち該当するものは必ず)
  5. 該当型の依頼文をコピーし、空欄だけ差し替えた
  6. 成果物を、受け入れテスト5つで見た
  7. 不合格なら、指示文ではなく材料・範囲・人の決断のどれを直すか書いた
  8. 合格したら、ズレ1行だけ型に足した
  9. 来週も同じ仕事なら、依頼文を短くして再現できるか試す
  10. 2型目は、1型が短い依頼で回ってから

全体表は保存用に切って使ってください。依頼文は、机の templates/ に置くと、配布資料より残ります。

まとめ:集めるな。渡せ。

検索されているのは「何を打てばいいか」です。現場で残るのは「何を渡すか」です。12型は、仕事の渡し方です。渡す材料、任せる範囲、人が決めること。この3点が揃えば、文章は短くていい。揃わなければ、100個あっても1ヶ月で開かれなくなります。

判断はプロ、作業はAI。入口と出口は人が握る。型は増やす前に、1件を机の上へ。作り方と棚卸しと社内ルールは、すでに別の正本があります。入力してよい情報の線はセキュリティと情報入力、伴走の役割はAI顧問とはにあります。この記事の仕事は、渡し方を12個、コピーできる状態で置くことです。

自社の1業務へ落とす資料は、下に置いてあります。

「自社なら何から始めるべきか」を見つけたい方へ

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