採用スカウトの仕事は、候補者を探して選ぶところから、一人ひとりに合わせた文面を作って下書きに入れるところまで、AIに任せられます。直近の支援先では、AI(Claude)が採用媒体の何万件から「全員に送りたい」と思える20人を選び、文面を下書きまで入れました。導入にかかったのは1時間。送信ボタンだけは、人が押します。それができたのは、社長の採用基準を、インタビューで言葉にして残していたからです。ただし、採用媒体によっては自動操作やデータの取得を利用規約で禁じています。使う前に必ず確かめてください。

赤堀亘
執筆・監修 AiWiLL株式会社 代表取締役 赤堀亘

AiWiLL株式会社代表。AI顧問「WiLLAGENT」で、企業の仕事をAIと人が進められる形にする伴走支援を行っています。記事では、実務で使える手順と、人が確認すべき点を明らかにします。

この記事は、YouTube「AI顧問の現場録」の新コーナー「大興奮!今週のAI導入」の1回目で、熱海の港で、聞き手の高橋の質問にAI顧問の私が答えた回の記録です。撮影日(2026年10月10日)時点の内容です。

この記事の結論

  • スカウト採用で工数がかかるのは、「候補者を探して選ぶ」と「一人ひとりに合わせた文面を作って送る」の2つ。ここをまとめてAIに任せました。
  • AIが「うちに合う人」を選べたのは、社長の採用基準やニュアンスを、インタビューで言葉にして残していたからです。
  • AIにブラウザを操作させ、採用媒体の何万件から20人を選びました。リストを見た採用担当が「全員に送りたい」と思える精度でした。
  • 文面は、採用担当の過去の文面とトーンに合わせて作り、下書きまで入れます。送る相手と文面が合っているかを確かめて、送信だけは人が押します。
  • これまで1人30分〜1時間かかっていた仕事が、導入の1時間で20人分。今後は5分ほどの指示で回せる状態になりました。毎日回さなくても、週1回で十分です。
  • 採用媒体によっては、自動操作やデータの取得を規約で禁じています。候補者の情報は個人情報なので、規約と扱い方を先に確かめてください。

動画で見たい方は、YouTube「AI顧問の現場録」の回をどうぞ:採用スカウトをAIに丸投げしたら、何万件から「全員に送りたい」20人が出てきた(2026年10月10日の収録)

スカウトの工数は、「探して選ぶ」と「一人ずつの文面」

直近の支援先で、採用業務にAIを入れたいという相談がありました。どんな支援ができるかをディスカッションしていく中で見えてきたのが、スカウトメールで採用していく際の一連の仕事です。

図解

  1. 探す

    採用媒体で、候補者を検索して見ていく

  2. 選ぶ

    自社に合いそうな人を選び、リストにする

  3. 書く

    一人ひとりの希望や職歴に合わせて、文面を作る

  4. 送る

    スカウトを送信する

スカウト採用の一連の仕事

この一連の仕事が、結構な工数を取られていました。なので、ここも業務まるっと、AIでやってみましょうかと提案しました。

AIが「うちに合う人」を選べたのは、社長の採用基準が言葉になっていたから

その会社では、社長の採用基準やニュアンスまで、実際にインタビューをして聞き取っていました。ふわっとしたところから、しっかり要件に固まったところ、カルチャー的なところまで、情報が残っている状態です。だから、本当にどういう人材を採りたいかは、かなり作れていました。

図解

ふわっとした印象

社長が「こういう人がいい」と話すニュアンス

要件

経験や条件など、しっかり固まったところ

カルチャー

会社の考え方に合うか、どんなマインドの人か

AIに渡した、社長の採用基準

まずそれを参照して、今の自分の会社に合う人材をどうリサーチするか、どうリストにしていくかを、AIにさせました。経営者に採用の判断を聞くときの聞き方は、経営者の判断をAIに渡すために、理念より先に「実際に決めた場面」を聞いたにも書いています。会社の情報をAIが読める形で置いておく考え方は、AIに毎回説明するのは、もうやめようにまとめました。

媒体の操作も、頼むだけになった

聞き手の高橋も、採用担当の方が「こういうことをしたい」と話すのを会議で聞いていて、結構複雑そうだと思ったそうです。採用にはいろいろな媒体があって、媒体によって性能も違い、難しいという話をしていたからです。それが、AIはパソコンでできることはほとんどできるので、すんなり進んでしまった。そこに感動した、と話していました。

AIの導入自体は、本当に1時間で終わりました。まず、その会社が使っている媒体をAIに渡して、候補者のリサーチや選定ができるかを確かめました。結構簡単にできる、となりました。

今回使ったAIはClaudeです。Claudeにブラウザを操作させて、媒体の中身を読み取らせる。いわゆるスクレイピングです。スクレイピングは、膨大なデータの中から、必要なものだけを取ってくることを言います。

再現イメージ

採用担当

社長の採用基準のファイルを読んで。そのうえで、いつもの採用媒体から、うちに合いそうな候補者を選んでリストにして。それぞれ、選んだ理由も添えて。

AI

採用基準を読みました。媒体の候補者を確認し、基準に合う人を選びました。一人ずつ、選んだ理由を添えた一覧です。

採用担当

この人たちに、過去のスカウト文面のトーンで、一人ずつ文面を作って下書きに入れて。送信はしないで。

AI

下書きに入れました。送信はしていません。内容をご確認ください。

担当者がAIに頼むときの形(実際の指示文ではありません)

ただし、会社が使う採用媒体によっては、NGなところもあります。自動操作やデータの取得を、利用規約で禁じている媒体があるのです。真似をするときは、使う前に必ず、その媒体の規約を確認してください。

何万件から、「全員に送りたい」20人

条件は、かなり複雑に出せます。こういう経験の人材で、会社から車で1時間圏内で、こういうマインドの人、こういう記載がある人。そういう条件で、どんどん出してくれます。

図解

  1. 媒体の登録者

    何万件というデータ

  2. 条件で絞る

    経験、会社から通える距離、プロフィールの記載

  3. 採用基準で選ぶ

    社長の言うマインドやカルチャーに合うか

  4. リスト

    選りすぐりの20人

何万件から、20人へ

何万件というデータから、本当に選りすぐりの20件を選んでくれました。そのリストを見たら、まさに全員に送りたい、となるような精度で、しっかりリストアップできていました。これはこの1件での実感で、いつも同じ精度が出ると約束するものではありません。それでも、人が媒体を一人ずつ見ていくより、適切な候補者を選べたと感じています。

文面も下書きも、送信だけは人

しかも、その人たちが書いている希望や職歴に応じて、文面を作っていきます。採用担当の方が過去に使っていた、初心者向けや経験者向けの文面があったので、それをもとに、候補者一人ひとりに合わせた文面を作りました。トンマナ(文面の口調や雰囲気)も、採用担当の方が「いい」と思えるところまで調整されています。

その文面を、またブラウザ操作で、スカウトの下書きまで入れてくれます。あとは、送る相手に対して文面が合っているかを担当者が確かめて、最後に送信だけは自分で押す。

図解

AIに任せた

候補者を探す・選ぶ・リストにする・一人ずつの文面を作る・下書きに入れる

人に残した

送る相手と文面が合っているかを確かめる・送信ボタンを押す

AIに任せたこと、人に残したこと

どこまでをAIに任せ、どこから人が持つかの線引きの考え方は、AIエージェントに仕事を任せる前に|中小企業が決めるべき「委任設計」にまとめています。

1人30分〜1時間が、1時間で20人分に

これまでは、媒体をぽちぽち検索して、見ていって、この人にはこういう文面を送ろう、と考える。これに1人あたり30分から1時間くらいかかっていました。

図解

これまで

1人あたり30分〜1時間。検索して、見て、文面を考えて送る

導入の日

レクチャーしながら1時間で、20人分の選定から文面・下書きまで

これから

担当者は5分ほどチャットで指示。あとはAIを待ち、文面を確かめて送信を押す

これまでと、これから

収録の数字で単純に掛け算すると、これまでのやり方で20人分を用意するには、20人×30分〜1時間で、10〜20時間かかっていた計算です(実際に測った数字ではありません)。それが、レクチャーしながら模索しながらの1時間で、20人分の選定から文面、下書きまで進みました。今後は、担当者さんが5分ぐらいチャットで指示を出して待っておけば、あとは文面を確かめて送信ボタンを押していくだけで済む状態になっています。採用担当の方も、すごく喜んでくれました。

この時点で分かっているのは、ここまでです。スカウトに返事が来たか、採用につながったかは、収録の時点ではまだ分かりません。

毎日回さなくていい。週1回でちょうどいい

聞き手から「常時起動して、ずっと探させることもできるのでは」と聞かれました。できますが、あまりする必要はないかもしれません。候補者は、そんなに一気に増えないからです。

週1回くらい、新しい候補者が出たらそのたびに送っていく。そういう形でいいと思います。「週1回チェックしておいて」と指示しておけば大丈夫。良い人が現れたら、すぐに送ることができます。決まった頼み方を毎回そろえておくやり方は、AIに教えた仕事を1行で再現する「スキル化」入門に書いています。

この方法が向かない場合

どの会社でも同じようにうまくいくわけではありません。次の場合は、先に別のことから始めてください。

  • 採用基準が言葉になっていない:今回うまくいったのは、社長の採用基準が残っていたからです。基準がなければ、AIは何を基準に「うちに合う人」を選べばいいか分かりません。先に社長へのインタビューから始めます。
  • 使っている媒体が、自動操作やデータの取得を規約で禁じている:その媒体では、AIにブラウザを操作させるやり方は使えません。規約の範囲でできることを探します。
  • 候補者の情報を扱う準備ができていない:候補者のプロフィールは個人情報です。個人情報保護委員会は、事業者が生成AIに個人情報を含む指示を入力するなら、その情報の利用目的の範囲内かを十分に確かめること、入力した個人データをAIの提供事業者が機械学習に使わないこと等を十分に確かめることを求めています。スカウトのために読み取った情報をスカウト以外に使わないこと、会社が契約した、入力が学習に使われないプランで扱うことを、先に決めておいてください。出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日公表)。公表ページ
  • 送る数を増やしたいだけ:この事例は、一人ずつに合う人を選び、一人ずつに合う文面を作った話です。同じ文面を大量に送るための使い方ではありません。

持ち帰り:社長に10分インタビューして、採用基準を残す

最初の一歩は、社長に「どんな人を採りたいか」を10分インタビューして、文字にして残すことです。それが、AIに渡す一番の材料になります。聞くときは、理想の人物像より、実際にあった場面から聞くと言葉になりやすくなります。

図解

  1. 良かった人

    これまでに「この人は良かった」と思った人は、どんな人でしたか

  2. 外せない条件

    経験・資格・会社から通える距離で、外せないものは何ですか

  3. カルチャー

    うちで長く活躍している人に、共通することは何ですか

  4. 見送った理由

    会ってみて「違う」と思った人は、何が違いましたか

  5. 文面

    これまでに返事が来たスカウトの文面は、どれですか

社長に聞く5つの質問(例)

聞いた内容は、そのまま文字にして残します。AIに聞き手をさせて文書にするやり方は、AIにインタビューさせる棚卸し術にまとめています。スカウトの先の、面接の質問の作り方は採用の質問を、現場の仕事から逆算するにあります。

AIに任せる前に、次の3つを確かめてください。

  • 使っている採用媒体の利用規約で、自動操作やデータの取得が認められているか。
  • 候補者の情報を扱うAIは、会社が契約した、入力が学習に使われないプランか。
  • 送信の前に、人が送る相手と文面を確かめる手順になっているか。

まとめ

採用スカウトは、候補者を探して選ぶところから、一人ずつの文面を作って下書きに入れるところまで、AIに任せられます。直近の支援先では、導入の1時間で、何万件から「全員に送りたい」20人を選び、文面を下書きまで入れました。送信だけは、人が確かめて押します。それができたのは、社長の採用基準が言葉になって残っていたからです。

最初の一歩として、社長に「どんな人を採りたいか」を10分インタビューして、文字にして残してください。

※撮影日(2026年10月10日)時点の内容です。採用媒体によっては、自動操作やデータの取得を利用規約で禁じています。使う前に必ず規約を確認してください。

医療、建設、農業、営業、製造、飲食など、さまざまな仕事の人が並ぶAiWiLLのキービジュアル。AIを使いこなす会社は、イケてる。

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